コラム「南風」 スキーで食べたい黒糖


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 僕のモノ作りの原点は、黒糖です。社会人になって間もない頃、黒砂糖を使った商品開発を任されたのがきっかけでした。以来、黒糖への思い入れが強く、これまでにサンゴカルシウム入りの黒糖をはじめ、ひとくち黒糖、粉末黒糖、黒糖のど飴などを商品化してきました。

また当社の菓子製品のレシピには、必ず県産黒糖を入れるよう工夫しています。かつて、西表島の黒砂糖にこだわった「黒糖ゼリー」の開発を手がけたこともありました。このゼリー企画には僕のスキー体験が絡んでいるので、少しご紹介しましょう。
 20代後半にスキーの魅力にとりつかれ、旅費を捻出しては本土へスキー遠征していた時期がありました。スキー場での楽しみのひとつに、山小屋やレストハウスでの休憩があります。雪そのものに感動をおぼえるウチナーンチュ(僕)にとって、銀世界を眺めながらの食事やコーヒーブレイクは、それだけで贅沢(ぜいたく)な時間でした。そんな至福のひととき、ふと思い浮かんだアイテムが「黒糖ゼリー」だったのです。周囲のスキーヤーたちの、ソフトクリームやおしるこでひと息ついている様子を見ている間、僕の疲れたカラダは、「黒糖ゼリーが食べたい」と呟(つぶや)いていたのでした。
 優しいのどごし、素朴な甘さ。スキーのおやつに最適と直感した僕は早速、カップ入りの黒糖ゼリーの企画を進めました。西表黒糖100%使用。商品名「猫(ネコ)涼(すず)み」。フタに描いたイリオモテヤマネコの絵がキュートで斬新でした。トキメキ満載の新商品でしたが、15年ほど前に一度テスト販売しただけで、製造休止が続いています。風味秀逸と好評頂いたものの、安定生産に向けた課題でつまずきました。しかし諦めてはいません。いつの日か黒糖ゼリーを復活させ、白銀のスキー場に沖縄の風を届けたいと思います。
(金城幸隆、オキネシア代表取締役社長)