コラム「南風」 親という仕事


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 コラムを書くようになってから、障がい児や子育て一般の相談が増えている。中でも、発達障がい児の情緒に対して、「どう接していいか分からない」と悩む保護者からの相談が多い。「褒めるより叱ることが多い」「パニックの対処の方法は」「たたいてしまった」などだ。葛藤が痛いほど伝わり、会話の途中で、涙声になる人も多い。

 家庭や学校、地域の中で、うまく適応することが難しくなっている子どもが増えている気がする。発達障がいではないかと思い悩む保護者に対し、「親のしつけが悪い」という声も聞かれ、「障がいなのか、甘やかしなのか」と、境界線で戸惑う保護者が多い。
 人の関係も希薄になっている今の世の中で、子育ては簡単ではない。まして障がいがあれば、母親のストレスは慢性化する。「しつけ」「体罰」「虐待」の間で心は揺れ、何とか自身を保っている現状だろう。
 こうした親たちに寄せられる助言は「相談できる人を探して」「趣味などを見つけてみては」「少し子どもと距離を置いてみて。子どもに対する見方も、違ってくる」など。どこでも同じことを言われるという。親もその意味を当然、理解している。子どもの情緒が不安定にならないように、声掛けひとつにも注意を払う。しかし、「(子どもを)理解してくれるだろうか」「友達を傷つけないか」「いじめにあわないか」と、子の成長に不安は常につきまとう。
 私も常に模索してきた。子どもの行動一つ一つに「これは、OKなんだ」「なぜ、いやなんだろう」と、立ち止まり考えてきた。しんどい作業だ。でも、愛(いと)しいと思える瞬間があるから頑張れる。
 障がいの判定があってもなくてもやることは一つ。その子に向き合って成長に寄り添うだけ。親という仕事は、医者よりすごい仕事だと思う。
(名幸啓子、障害児サポートハウスohana代表理事)