コラム「南風」 薬(やく)立つ手帳


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 健康で風邪薬しかもらわない。湿布だけ。ずーっとこれしか飲んでいない。ここでしかもらわないから。薬の名前は覚えている。かさばる。薬の説明書だけでいい。だからおくすり手帳はいらない! こう薬局でおっしゃる方がいます。ここの病院の手帳はこれ、あの病院の手帳はこれと、病院ごとに何冊もお持ちの方も。ひょっとしたら、おくすり手帳の使い方の説明を受けていないのかもしれません。

 たまにしか飲まない風邪薬でも注意が必要です。過去に抗生剤で副作用が出たことがある場合や、卵アレルギーの方は炎症を抑える一部の薬は使えないので、病院でも薬局でも確認して薬を出しています。湿布でも喘息(ぜんそく)の方には注意が必要なことがあります。
 おくすり手帳では、継続して通院しているのかどうかの確認もできます。何かしらの理由で別の薬局やドラッグストアで一般用医薬品・健康食品などを購入する時にも、おくすり手帳で思いがけない飲み合わせや食べ合わせが見つかることがあります。不慮の事故で薬の名前が言えない場合、どうしますか。胸のポケットに入る大きさは邪魔でしょうか。
 今飲んでいる薬の説明書だけでは、時系列の変化が分かりません。おくすり手帳があれば、病院や薬局は併用薬の確認に時間を取られず、待ち時間の短縮にも繋(つな)がります。また、おくすり手帳に受診までの体調や医師・薬剤師に伝えたいことなどをメモしておくと診察・調剤がスムーズです。
 年間10回通院しても、保険の負担割合にもよりますが、100円、200円で時間と安全を買えるなら高くないと思いませんか。飲んでいる全ての薬を一冊で順番よく記録することが大切です。かかりつけ薬局で一冊にまとめてもらいましょう。大切な自分の薬歴です。
(吉田洋史、沖縄県薬剤師会理事)