コラム「南風」 星の置き土産


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 沖縄にホシクボ、あるいはフシクブンと呼ばれるところがある。星窪と書き、星が落ちてできた窪(くぼ)みという意味だ。アメリカ・アリゾナ州の直径1200メートルのバリンジャー隕石(いんせき)孔は有名である。

 70年も前のことだ。石垣島の日食観測で来沖していた下保氏は、次のような話を聞いたと記している。「昔、天から星が落ちてできたといわれるくぼ地がある。それを星窪とよんでいる。一つは、普天間国民学校の運動場として埋められたが、他は少し離れた宜野湾街道付近の畑の中にあると…。学校の先生によると、校庭の星窪は埋められる前は、直径20メートル位の円形で深さは3メートル、周辺の斜面はやや急であった。他は東西40メートル、南北60メートル、深さ3~4メートル」と具体的である。さらに「石灰岩が多い地層なので、石灰洞の陥没した跡ではないかと。しかし星窪の伝説と名称とが何の意味もなしにつけられたとも考えられない」と結んでいる。後日、新帯国太郎は、隕石孔ではなく、カルスト地形の一現象であると論文にまとめている(1959年)。これは正しい。
 この一帯は、石灰岩の地層からなり、水の浸食作用を受けたカルスト地形が発達するところである。石灰岩地域のデコボコ地形をカルストというが、円形の大きな窪みは、ドリーネという。初めての人には、異様に感ずる地形である。今帰仁村の湧川小学校の校歌に「りゅうせいおり立つほしくぼの」とある。石灰岩の地形ではないが、運動場に立ち周辺を見回すと、きっとうなずけるはずだ。
 30年来、気にかけている場所がある。座間味島の安護の浦。三重丸の形態を残す海岸線は星が落ちたのではないかと。奄美大島笠利(かさり)のきれいな半円形の海岸線を描く湾は、奄美クレーターとも呼ばれているのだから。沖縄にもきっと星の落ちたところがあるはずだ。
(大城逸朗、おきなわ石の会会長)