コラム「南風」 「資金調達」の壁


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 映画完成後に結成された「人魚に会える日。」興行チームには、数多くの壁が立ちはだかった。
 まずは資金調達だ。撮影費は僕のアルバイトで貯(た)めたお金でどうにか賄えたが、公開にあたり倍以上の資金が必要となる。そこで、県内企業に映画の協賛を呼び掛けることにしたのだが、結果は相当厳しいものだった。

 「作品に基地問題が含まれている以上、企業としては支援できない」

 どの企業も断る理由は同じだった。スタッフ一同、そんな理由が出ること自体が予想外だった。

 ただ純粋に、いまの沖縄を大学生の視点で切り取った作品。基地問題は沖縄を表現するために必要不可欠だった。基地に関して反対や賛成を特に強調する作品ではないが、どうやら大人にとっては手をつけにくい作品だったらしい。

 資金を協賛によって集めきれない現実に直面した僕らは頭を抱え込んだ。しかし「企業としては厳しいが、個人的にはとても応援したい」と、いくつかの企業の方が話していた言葉から、新たな手法を思いついた。それは「クラウドファンディング」という手法だ。簡単に言えばネット上で募る寄付のようなもので、金額に応じて特典が用意されており、企業だけでなく個人からも支援していただくことができる。

 資金が目標金額に達しなければ、システムの運営会社に分配する料金も増えるため、かなりリスクを伴う手法であることは知っている。しかし、資金が集まらない以上、興行活動を進めることができないため、ついに実施へと踏み切った。

 いよいよ今週から開始だが、結果がどうなるのかは想像もつかない。

 「資金調達」という、最初から大きな壁を目の前にした興行チームだが、多くの方々の力によって、どうにか乗り越えていきたい。
(仲村颯悟、映画監督)