沖縄の土地、歴史に真っすぐ向き合う新鋭作家が登場した。戦時中の特攻隊長から現代の無軌道な若者までを縦横無尽に描いた小説「月(ちち)ぬ走(は)いや、馬(うんま)ぬ走(は)い」で今年の群像新人文学賞(講談社主催)を受賞。「小説世界の沖縄を書き続け、更新していきたい」と語る。
那覇市出身、琉球大4年の21歳。大学のすぐ近くを米軍の輸送機オスプレイが飛行する。「基地や戦闘機の存在に慣れてしまわないように」日々を過ごしている。
沖縄戦の組織的戦闘が終わったとされる「慰霊の日」(6月23日)には過去とリンクする糸口が現れるのだと説明する。「毎年、県民はひっそりとし、黙とうをささげる。そうすることで過去と現在がつながっているんだなと感じます」
受賞作のタイトルは「光陰矢のごとし」を意味する沖縄のことわざに由来する。「語りの力に圧倒された」(作家の町田康さん)などと選考委員から高い評価を得た。
本格的に書き始めたのは大学生になってから。愛読する中上健次や米作家フォークナーの作風に感化されたという。
それぞれの「地元」をうたうヒップホップにも影響を受けた。作中「この島に降り注いだ戦火(いくさび)、そしていまここに生きているおれらは何?」と語られるように、沖縄を深く掘り下げることで、普遍的な物語をつくり上げるのが目標だ。
世界で活躍する同郷のラッパーAwich(エイウィッチ)さんを念頭に「音楽にできるなら文学でもできるんじゃないかと思っています」。
(共同通信)