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【書き起こし&ノーカット動画】Awichさん、沖縄グローバルアンバサダー就任会見 「私と同じ景色を見て、一緒に未来を作って」


【書き起こし&ノーカット動画】Awichさん、沖縄グローバルアンバサダー就任会見 「私と同じ景色を見て、一緒に未来を作って」 沖縄グローバルアンバサダーに就任したAwichさん=6月10日、那覇市の識名園(喜瀬守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 大城 周子

 沖縄出身のラッパーAwich(エーウィッチ)さんが「沖縄グローバルアンバサダー」に任命され、6月10日に那覇市にある世界遺産「識名園」で就任式と記者会見が行われた。このページでは、記者会見での質疑応答の概要を書き起こしてお伝えする。

Awich: 沖縄グローバルアンバサダーに任命され、沖縄で生まれ育った私にとっては本当に光栄なことです。ありがとうございます。

私は14歳からヒップホップアーティストとして、自分の身に起きたことや生まれ育った環境のことをテーマに歌を作ってきました。沖縄が教えてくれた、自然と共に生きるたくましさだったり、平和への思いだったり、いろんな運命と対峙(たいじ)するしたたかさだったり。私が世界中を旅するようになって、いろんな人と出会って話をする時に、世界を引きつける要因になっていると実感しています。

沖縄の価値観、思想、文化を持って世界を一つにする一端を担えるよういっそう努力していきたい。見守っていただけるとうれしいし、私が世界に発信する時に一緒に同じ景色を見ていただけると、とても楽しい世界になっていくんじゃないかなと思っています。

アーティスト活動とは別に、「沖縄のカルチャーを世界に発信するぞ」とやっている事業が二つあります。一つはハブ酒。世界中の若者も「これいいね」って共感してくれるお酒が沖縄にある。この貴重な“文化財”をモダンにして、世界中のお祝い事を祝えるようなものになってほしいと思っています。もう一つは「Know The World」(という事業)。沖縄の若者たち、特に所得格差などによって「(自分には)手が届かない」と思っていたような子たちに英語学習や文化交流の機会を無償で提供して、世界につながるきっかけになればいいなと思っています。

玉城デニー知事を表敬し、握手するAwichさん=10日、県庁(喜瀨守昭撮影)

――(アンバサダー就任は)Awichさんのスタイルが評価されてのものだと思う。沖縄の観光にどんなふうに寄与していきたいか、期待や抱負、意気込みを聞かせてほしい。

Awich:観光において、きれいな場所があるとか美しい自然があるとかいうのも大事だと思うんですけど、 今の時代はインターネットが普及している。人々がどういう生活をしてるのか、その場所にどういうストーリーがあるのか。それが観光の資源になり得る時代だと思っています。

例えば私が作った螺旋(=RASEN in OKINAWA)という曲がある。沖縄出身のラッパーたちがそれぞれの地元や自分の人生のストーリーを歌った曲です。そのミュージックビデオに出てきた場所が聖地巡りのロケーションになっていて、そこで同じように写真を撮って拡散してくれる。首里城だったり、 那覇の繁華街の一角だったり。そういうものが重要な場所になり得るストーリーや意味付けをしていくことができる時代だと思う。(自分が)そのきっかけになる人物になっていけたらと思っています。

「RASEN in OKINAWA」のミュージックビデオにも登場する首里城の「奉神門」

――ヒップホップアーティストとして「グローバルアンバサダー」という肩書きは初めて目にする。今後、どういった存在になっていきたいか。

Awich:私はこれからも沖縄や自分のことを歌っていくつもりではいます。ヒップホップというジャンルは、どんなふうにスキルフルに自分のストーリーを伝えて、そこに共感を生むのか(が大事)。「かっこいいだろう」だけじゃなくて、自分の苦悩や葛藤もさらけ出すことで、今悩んでいる人たち、今葛藤がある地域の人たちが共感してくれるというジャンルの音楽です。(アンバサダー就任は)ヒップホップが沖縄でも認知されてきたという印だと思います。

――今後の予定と、 世界から見た沖縄が今どんな感じなのか。Awichさんの視点で教えてほしい。

Awich:年内に中国やパリなど本当にいろんなところへ行きます。自分でも覚えられないぐらい。海外から見た沖縄…私の肌感覚では、沖縄の「いちゃりばちょーでー(出会えばきょうだい)」という思想や、「 なんくるないさ(なるようになる)」という言葉の話をすると、「めちゃくちゃ深いし、めちゃくちゃ今の世界に必要だね」というようなリアクションを感じます。

本当にいろんな物が世界に普及しきって「じゃあ生きる根源ってなんなんだ」みたいなディスカッションが世界中で起こっている中で、沖縄で培われた生きるためのしたたかさやたくましさ、自然と共に生きる強さ、平和に対する根本的な思いに対して「俺たちそこに戻んなきゃいけないんじゃない?」というリアクションを私は感じています。だから、私たち沖縄で生まれ育った人もそれを大事にしていく、そこを発信していくことが大事なんじゃないかなと思っています。

沖縄で行われたライブで観客を沸かすAwichさん=2023年7月、沖縄アリーナ(又吉康秀撮影)

――観光には自然だけじゃなくてストーリーが大事という話があった。今後また沖縄を題材にした新曲の予定もあるか。

Awich:あります!ありますよ、それは(笑)。今度はどこにしようか、というのはまだ決めてないんですけど。こういう光栄なポジションもいただいてるので、もっと壮大なストーリーを作っていけるんじゃないかなと。ラッパーのみんな、ミュージシャンのみんな、そして沖縄県の皆さん、連携して大きなストーリーを作っていけるんじゃないかなと私も楽しみにしています。アジアのアーティストともたくさんコラボを予定していて、アジアで活躍しているラッパーたちも沖縄の良さに気づいてくれています。大きな渦にして、世界に発信していけたらいいなと思っています。

――自分はやっぱりウチナーンチュだなと思うところは?そして沖縄県民へメッセージをお願いします。

Awich:自分がウチナーンチュだと思うところ…楽しい節々で「かりー」(※沖縄で乾杯のときによく使われる言葉)したくなるところですかね。皆さんと自分の楽しさを倍増させてつなげていく。うれしさや幸せを共有する時間にしようよ、みたいなことを世界各地でやってます。 ウチナーンチュの皆さんもそういう心が根底にあると思うんです。それを隠さずに世界に行った時はやってみてください。楽しい人生になると思います。

沖縄アンバサダー就任記念のトロフィーを掲げるAwichさん

沖縄の方々には、これだけ世界から注目されるような文化や思想、文化財、精神が全部この小さな島に詰まってるということを自覚してほしいです。私の「Know The World」のプログラムも、「世界を知りに行こう」というコンセプトでやってるんですが、「世界を知った上で自分を知る」というサブテーマがある。

足元を見つめること、ここに何があって、それに自分がどういうふうに関われるのか。Awichというアーティストの他にもラッパーやミュージシャンもたくさんいます。それがどう自分と関わりがあるんだろう、どんなふうに自分は力を貸せるんだろう、寄与できるんだろう、と関わり合うことで全てが一つになって、ゆいまーる(助け合い)になって、大きな発信力を世界に投げかけていくと思う。

私がやっていく活動に注目していただきたいし、「ああやってるね」ではなく、自分も行ってみようかな、 やってみようかな、という思いになっていただきたいです。みんなでこの沖縄の良さ、そして未来を一緒に作っていけたらと思っています。