Awichから故郷・沖縄の若者へ 無償の英語学習プロジェクトに込めた思い 「チャンスつかみ取る人に」


Awichから故郷・沖縄の若者へ 無償の英語学習プロジェクトに込めた思い 「チャンスつかみ取る人に」 英語学習プロジェクトを立ち上げたAwichさん=2023年7月30日撮影
この記事を書いた人 Avatar photo 大城 周子

 沖縄出身のラッパーAwich(エーウィッチ)さんが、沖縄の生活困窮世帯の若者を対象に、無償で英語学習の機会を提供するプロジェクトを立ち上げた。生まれ故郷が抱える社会課題である「子どもの貧困」と、経済的な理由や地理的な制約から生まれる「体験格差」を解決したいとの思いから始まった企画。Awichさんは「小さな一歩かもしれないが、経験するのとしないのとでは大きな差がある。好奇心を育てて、いろんな可能性を感じてほしい」と参加を呼びかける。5月6日午後11時59分まで、特設サイトの専用フォームから応募できる。

 プロジェクト名は「Know The World -Awichグローバル教育プロジェクト-(アトランタ留学&まちなか留学)」。国際交流事業を展開する「HelloWorld」(ハローワールド、本社・沖縄市)と共同で取り組む。

プロジェクトのキービジュアル

 対象は沖縄県内在住の高校1年生~満22歳。生活保護世帯や就学援助を受給している世帯またはそれに準ずる世帯、日本学生支援機構が定める給付奨学金の家計基準の第1区分に該当する人。

 応募者から100人を選考し、県内に住む外国人家庭での1泊2日のホームステイ体験「まちなか留学」を提供。さらに3人にAwichさん自身がかつて留学していた米アトランタへの短期留学を無償提供する。アトランタへの旅程は10日間程度で、パスポートの申請費用や滞在費は全て援助する。現地の家庭にホームステイし、探究学習や沖縄県人会との交流なども計画しているという。

 今回のプロジェクトが動き出したのは昨年11月~12月頃。かねてより歌詞に沖縄を盛り込むなどアイデンティティーに誇りを持って活動してきたAwichさん。故郷が抱える社会課題を解決したいとの思いがあり、知人を通じてハローワールドとつながったという。

プロジェクトについて語るハローワールドの野中光代表(右)とコーディネーターの高江洲理奈さん=4月22日、沖縄市の同社

 同社が手掛ける「まちなか留学」は沖縄と関東で展開しており、過去4年で延べ9000人が参加。内閣府の補助事業に採択された2023年度は約6000人が参加した。地元企業や個人から寄付を募る「まちなか留学基金」を活用し、経済的な理由から自費での留学が難しい子どもたちへの無償提供も実施している。

 まちなか留学の「ホストファミリー」には米国をはじめ、ヨーロッパ、南米、アジアなど約60カ国の国籍を持つ200組が登録しているという。同社によると職業もさまざまで、米政府関係機関や基地外に住む米軍の関係者のほか、沖縄科学技術大学院大学(OIST)や県内大学などの学術関係者、環境保護活動に取り組む人、牧師など多岐にわたるという。

まちなか留学でホストファミリーと交流する参加者(提供)

 「自分が置かれた逆境を、自分の強みに変えていく」が今回のプロジェクトのコンセプトだ。同社の野中光代表によると、Awichさんは「沖縄の発展のためには産業が必要で、その産業を支える人材を育てたい」と思いを語ったという。

 4月23日に開かれたオンライン説明会にはAwichさん本人も登場し、リアルタイムで寄せられた質問に答えた。

 夫の突然の死など“逆境”を乗り越えて33歳でメジャーデビューし、今や「日本ヒップホップ界のクイーン」と称されるAwichさん。「私は遠回りもいっぱいしたけど、英語を学んでいたおかげで可能性が広がった。文化圏やバックグラウンドが違う人たちとのコミュニケーションを通じて視野が広がった。それを自分が生まれ育った沖縄の子たちにも経験してほしい」と思いを伝えた。

 さらにプロジェクトへの参加をきっかけに「世界を知る手触り、感触を覚えてほしい。そして世界を知った上で自分がどう感じるのかを知ってほしい。アンテナを張って自分をガイドして、好奇心旺盛にチャンスや情報を自ら取りに行ける人になって」と沖縄の若者へエールを送った。

 プロジェクトの詳細や応募方法は特設サイトで確認できる。