半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は24日、熊本県菊陽町に建てた国内初となる第1工場の開所式を開いた。10~12月期の量産開始に向け、生産ラインの立ち上げを急ぐ。
年内に建設を始める第2工場と合わせ、政府が約1兆2千億円を助成する国家プロジェクト。先端半導体のサプライチェーン(供給網)の強靱化(きょうじんか)に加え、台湾有事も見据えて経済安全保障の強化を急ぐ。
岸田文雄首相は式典にビデオメッセージを寄せ「半導体はデジタル化と脱炭素化に必要不可欠なテクノロジーだ」と指摘。第2工場にも財政支援を決めたと表明した。斎藤健経済産業相によると、補助額は最大7320億円になる。
TSMC創業者の張忠謀氏は「日本の半導体生産のルネサンス(復活)になる」と述べ、日台連携の意義を強調。劉徳音会長は「強力な供給網をつくる」と宣言した。
工場を運営するTSMC子会社のJASMに出資するソニーグループの吉田憲一郎会長兼最高経営責任者(CEO)は「TSMCから学ぶことが多い」と語った。JASMへの資本参加を発表したトヨタ自動車の豊田章男会長も駆け付けた。
第1工場では、日本企業が製造できない回路線幅12~28ナノメートル(ナノは10億分の1)相当のロジック半導体を生産。コンピューターの「頭脳」となる製品で、国内メーカーの画像センサーや自動車向けに供給する。投資額は約86億ドル(現在の為替レートで約1兆2900億円)。政府は最大4760億円を補助する。
台湾からの出向者約400人を含む約1700人が働く予定で、地域経済への影響も大きい。
TSMCは6日、第2工場を熊本県に建設すると正式発表。2027年末に量産を始める予定だ。第1工場と合わせ6~40ナノメートル相当の製品を手がける。雇用は計3400人以上、総投資額は200億ドルを超える見通しだ。
(共同通信)