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不幸な動物減らしたい 愛護活動に尽力 佐良直美さん(歌手) 捨て犬、捨て猫160匹と生活


不幸な動物減らしたい 愛護活動に尽力 佐良直美さん(歌手) 捨て犬、捨て猫160匹と生活 チャリティーコンサートで動物愛護について語る佐良直美さん(左)と安奈淳さん
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 ヒット曲「世界は二人のために」で知られる歌手の佐良直美さん(79)が、栃木県那須塩原市で犬のしつけ教室を開きながら、動物愛護活動に力を注いでいる。今は160匹超の捨て犬や捨て猫と生活。「無責任な飼い主をなくし、不幸な動物を減らしたい」と願う。

 「この子は足の調子が悪いみたい」「獣医師に相談してきますね」。犬のしつけ教室「アニマルファンスィアーズクラブ(AFC)」で、スタッフがせわしなく働いていた。広い室内にずらりと並んだケージの中では、犬や猫がじゃれ合ったり、寝転んだりしている。

 佐良さんがAFCを創設したのは、那須に移り住んで10年がたった1993年。自宅前に次々と子犬が捨てられたのを機に「人と犬が互いに幸せに暮らす方法を学んでほしい」と教室を始めた。6ヘクタール超の敷地には、レッスン用の室内ジムや複数のドッグランを備える。

保護した犬たちと散歩する佐良直美さん

 教室を運営する傍ら、近隣の捨て犬や捨て猫を保護し続け、気付けば大所帯に。約20人のパートのスタッフが交代で給餌や清掃、動物病院への付き添いを担っている。

 「渦に巻き込まれたような人生だったから。動物との時間は穏やかで心地いいですよ」。日本のジャズ歌手の草分けである水島早苗さんに師事し、67年に「世界は二人のために」でデビュー。69年に「いいじゃないの幸せならば」で日本レコード大賞に輝き、瞬く間にスターとなった。NHK紅白歌合戦には歌手として13回連続出場し、司会も経験。ドラマやバラエティーでも活躍した。だが、78年に水島さんが亡くなってからは芸能界から徐々に遠ざかり、87年に活動を休止。「水島先生がいなくなった寂しさがあったし、芸能人生はもうやり切った感があったんです」

 活動休止後は動物愛護活動にのめり込むように。今、特に力を入れるのは野犬の保護だ。佐良さんによると、野山で繁殖した野犬は警戒心が強く、狂犬病を持つ恐れもある。そのため自主的に野犬を保護し、獣医師による感染症の検査や不妊・去勢手術につなげている。

 私財を投じて活動しており、継続は楽ではない。昨年9月、そんな佐良さんの活動を支援しようと、親交の深い元宝塚歌劇団トップスターの安奈淳さんらがチャリティーコンサートを開催。佐良さんも舞台に立ち、ハスキーで温かみのある歌声で会場を沸かせた。

 取材中、愛犬たちがそばに寄ってくるたび優しくなで「甘えたがりなんですよね」とほほ笑む佐良さん。「共に生き、生かされてきた存在だから。人と動物が共生できる世の中になるよう、これからも力を尽くします」

(共同通信)