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希望者帰還へ新制度 福島原発 処理水放出に30年<東日本大震災13年>


希望者帰還へ新制度 福島原発 処理水放出に30年<東日本大震災13年> 処理水の海洋放出を実施した東京電力福島第1原発=2023年8月24日
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 東京電力福島第1原発事故で、福島県は今も県土の2.2%、約310平方キロが立ち入り禁止の帰還困難区域だ。かつての中心街など一定の広がりを持つ特定復興再生拠点区域(復興拠点)が昨年11月までに避難解除されたが、今後は帰還を望む人の家や周辺道路などに限った特定帰還居住区域を国が除染する新たな仕組みに移行。政府は2020年代中の希望者全員の帰還を目指す。原発では昨年8月、廃炉を円滑に進めるためとして、処理水の海洋放出が開始。難航必至の廃炉とともに30年程度続くことになる。

 東日本大震災と原発事故による福島県の避難者はピークだった12年5月、約16万5千人に上った。今年2月時点でも2万6千人余りが避難、うち2万300人ほどが県外で暮らす。避難解除まで時間を要した原発周辺の自治体は住民帰還が低迷している。全町避難が最長の11年半も続いた双葉町は、町内に暮らす人がようやく100人を超えた。これは住民登録者数の2%弱に過ぎず、にぎわいが戻るにはなお時間がかかりそうだ。

 第1原発の廃炉の最難関、溶融核燃料(デブリ)の取り出しは開始が3度延期されてきた。現時点では今年10月までに2号機で着手する目標だが、技術的課題から工法変更を迫られた。デブリは1~3号機に計約880トンあると推定されるが、全てを除去する算段は付いていない。

 一方で処理水の貯蔵タンク群が原発敷地を圧迫する。処理水を減らすため、約7800トンを17日間ほどかけて放出する手順を3回実施。2月28日に4回目が始まった。トリチウム濃度が国基準の40分の1未満になるまで大量の海水で薄めて流しており、国や県、東電が続けている海水の濃度測定で目立った変動はない。

 漁業者らは深刻な風評被害を懸念したが、福島県によると、福島沖の魚介類を避ける動きは国内では出ていない。しかし中国が日本産水産物の輸入停止に踏み切ったあおりで、一部の魚介類は価格低下がみられる。

(共同通信)