障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法を巡る訴訟で最高裁は3日、国の賠償責任を認めた。「戦後最大の人権侵害」に後手の対応を続けた政府に救済を迫る司法判断で、全面的な補償への検討が進む。一刻も早い解決を望む原告らは各地にまだ多く、切実な訴えにどう応えるか。取り組みが急がれる。
<解説>
旧優生保護法を違憲と断じ、国の賠償責任を認めた3日の最高裁判決は、旧法下で強制不妊手術という極めて重大な人権侵害が行われた点を問題視し、“時の壁”を打ち破った。救済に司法の強い意思を示したといえる。
一連の訴訟で国側は、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を主張。被害者らの訴えに対し、除斥期間の効果を制限する特別な事情もないと繰り返してきた。だが大法廷は、約半世紀にわたり、政策として障害のある人を差別し、不妊手術を強いた国の責任は極めて重いと判断。国の主張は信義則違反や権利乱用だと指弾し、損害賠償請求が可能な期間を区切らず、約35年前に確立した判例を変更する形で被害者に寄り添った。
不妊手術をされたのは約2万5千人。訴訟を起こした人以外に潜在的な被害者が多数いることは明らかだ。高齢化が進み、被害者に残された時間は少ない。司法の決着がついた以上、全面解決に向けた国の姿勢が問われる。
<用語>除斥期間
法律上の権利を行使できる期間で、それが過ぎると権利が消滅する。2020年の改正法施行以前の民法は、不法行為から20年の経過で損害賠償請求権が消滅すると規定。最高裁は1989年の判決で、この20年を除斥期間だと明確にし判例として確立した。ただ、被害救済できないケースが起こり得るとの批判もあり、改正民法では当事者の事情によっては請求権が残る時効とすることが明記された。改正法施行前に20年が経過した事案には適用されない。
(共同通信)