【ジュネーブ共同】米南部フロリダ州などに生息するアリの一種が、負傷した仲間の脚を「切除手術」したり洗浄したりすることを、スイスのローザンヌ大や沖縄科学技術大学院大(OIST)などの研究チームが発見し、16日までに発表した。成果の概要は米科学誌カレントバイオロジーに掲載された。
症例を診断したかのように、負傷部位によって切除か洗浄のみかを選択していた。傷口から細菌などが感染するのを防ぐ効果があるとみられ、生存率が大幅に改善したという。研究を主導したドイツのビュルツブルク大のエリック・フランク氏は「動物の世界で最も洗練された形態の治療行為だ」と指摘している。
チームは飼育するフロリダオオアリの集団を観察し、負傷した仲間への対応を分析した。脚の先端付近のけがでは口を使って傷口を洗浄するのみで、付け根に近い部分のけがでは、洗浄に加えて脚をかみ切っていた。
切除まですると生存率が90%を超えた一方、未処置では40%未満だった。アリの体は構造上、先端部を負傷すると病原体が全身に広がりやすく、短時間で手遅れになる恐れが強いという。脚をかみ切るのは時間を要するため、先端部のけがでは病原体の拡散防止に間に合わない可能性が高く、付け根の場合のみ切除を施すように進化したと、チームはみている。