雌の前ではリスクを冒す―? 危険が近づくと身動きしない「死んだふり」という独特の形態で身を守るアリモドキゾウムシの雄に、性成熟した雌を近づけると捕食を避けることよりも繁殖を優先しすぐに覚醒するとの研究結果を、琉球大と岡山大のチームが16日までにまとめた。
アリモドキゾウムシは外来種。サツマイモの害虫として知られ、鹿児島南部や沖縄に生息している。雌は1度交尾すると性フェロモンを1週間程度出さず、雄間で激しい競争がある。琉球大の日室千尋研究員は「捕食回避は大切だが、遺伝子を残せる交尾を重視するように進化したのではないか」とみる。
チームは、性フェロモンを出すようになった雌、未成熟な雌、雄それぞれ30匹ずつが入るカップに、刺激を与えて「死んだふり」の状態にさせた雄を一定距離で投入。1匹ずつ20回繰り返し、覚醒までの時間を調べた。
その結果、20匹のうち半数が覚醒するまでの時間は、他の雄や未成熟の雌が入ったり、何も入っていなかったりした場合は10分以上かかったのに対し、性成熟した雌の場合は約3分だった。さらに人工的に合成した雌の性フェロモンを用いると、数十秒で覚醒した。
一方、死んだふりをした雌に性成熟した雄を近づけても変化がなかった。
日室さんは、死んだふりを解除することは、天敵を使ったアリモドキゾウムシの防除に活用できる可能性があるとしている。成果は国際学術誌に掲載された。
(共同通信)