【金武】フィギュアスケート選手として国内外で活躍した岩野桃亜(もあ)さん(19)が金武町に移住し、新しい人生を歩んでいる。幼少期からオリンピックを目指して駆け抜けた人生を立ち止まり、岩野さんにしか成し得ない可能性のために研鑽(けんさん)を積んでいる。
3年前、コロナ禍の緊急事態宣言でスケートの練習ができなくなった。同じ頃、「数ミリの身長の伸びで昨日まで飛べていたジャンプが飛べなくなる」というフィギュアスケートの厳しい現実に直面した。
絶望感に沈む岩野さんを案じた母親の友美さんが、気分転換にと沖縄旅行に誘った。岩野さんは初めての沖縄で自然の魅力に強く感動。昨年秋、念願の移住が実現した。自然豊かな風景に癒やされ英気を養い、自然派志向な生き方を送る「ナチュラリスト」たちとの交流から、日々、新たな「気づき」を得る。
学生時代から興味があった映像制作を沖縄で始めた。恩納村安富祖区の「あふそ米」の生産農家の動画も制作。自然を融合した創作にも取り組む。
スケートの舞台は、競技大会から「氷上のエンターテイメント」と言われるアイスショーに移す。今春、元チームメイトの高橋大輔さんが主催する福岡県でのアイスショーに出演が決定し、南風原町のスケート場・サザンヒルで練習中だ。
「本土では気ぜわしい毎日から心を病む人々も見てきた。沖縄の自然と、その自然の中で共存し、自給自足する人たちのゆいまーるな生き方は、これからの時代、絶対に必要。人間本来の生き方が沖縄にある」と語る。充電期間後の「滑走」が楽しみだ。
(池辺賢児通信員)