沖縄最強牛を決める第120回春の全島闘牛大会(一般社団法人沖縄県闘牛組合連合会主催、琉球新報社共催)が12日午後1時から、うるま市の石川多目的ドームで開催される。闘牛を飼養している者なら誰もが憧れるこの大舞台に、今大会も県内各地から名うてのつわもの20頭が選抜された。注目の三大タイトルマッチ、無差別級全島一、中量級全島一、軽量級全島一を含め、実力拮抗(きっこう)の好カード全10試合が実施される。正午からオープニングアトラクション「龍神伝説」が開かれる。入場料は男性3千円、女性2千円、中高生千円、小学生以下無料。開場は午前9時。
(平川智之)
シャトルバス運行します
当日は午前9時から午後5時まで石川庁舎と会場間を、シャトルバスが7台運行します。ドーム駐車場は関係者専用です。会場周辺で路上駐車をしないよう、一般来場者はシャトルバスをご利用ください。バス利用者には抽選で景品が当たります。
■シーの1番 新力Baby×貴花大獣王
体重差300キロ超 激戦に期待
新力Babyは、昨年11月の第119回秋の全島闘牛大会に満を持して初参戦。5戦全勝中のバブルとの全島一決定戦を制して初の全島一王座に輝き、名実ともに沖縄ナンバーワン牛となった。高い注目を集めたこの決定戦は、互いに技の応酬で持ち味を存分に発揮した激闘となった。いまだに脳裏に焼き付いて離れない闘牛ファンも多いだろう。トガイー角を使ったカケ技からの腹取りを得意技とし、低い重心から対戦相手の懐目がけて飛び込む瞬発力や、相手に体勢を立て直させる暇を与えない畳みかけるように押し込む推進力には目を見張るものがある。
そのすさまじい攻撃力ゆえに短期決着も多いが、20分を超える長期戦も経験しておりスタミナにも問題ないだろう。近年、闘牛の大型化が進む中で新力Babyは全島一牛としては小柄な方だが、卓越した才能と日々の鍛錬によって培われた戦闘スキルや精神力、11戦全勝と積み上げてきた自信と経験で初防衛戦に臨む。
一方、挑戦牛の貴花大獣王(たかはなだいじゅうおう)は闘牛界でも屈指の恵まれた体躯(たいく)を持ち王者・新力Babyとの体重差は300キロ以上だ。その巨体から繰り出される重いワリ技や全体重をかけた押し込みは圧巻だ。2021年第115回秋の全島闘牛大会では全島一優勝旗争奪戦で闘勢琥珀(とうせいこはく)に挑み善戦を見せるが惜しくも敗れている。その他には全勝工業勝進龍(ぜんしょうこうぎょうかっしんりゅう)、ドル、上地大宝などの強豪牛との対戦経験がある。戦歴は11勝4敗。体重差を生かし圧倒的パワーで試合を有利に進めることができれば念願の全島一王座がおのずと見えてくるのではないだろうか。
新力Babyとしても、自身より大きな相手との対戦経験はあるがこれほどの体重差は未知の領域だ。貴花大獣王の揺らぐことのない絶対的スケールの違いは、新力Babyの強靭(きょうじん)な首力や高馬力の自慢のスピードさえも大波のごとくのみ込んでいくのだろうか。おそらく、どちらが勝つにせよ勝負は一瞬の攻防で劇的な決着が見込まれる。
■シーの2番 黒獣王×二代目武捷龍
激しい角さばき 打撃戦予想
黒獣王(くろじゅうおう)は、昨年5月の第118回春の全島闘牛大会で初の中量級全島一のタイトルを手にした。2018年の徳之島デビュー以来、内向きに鋭く尖ったガン角を武器に攻守兼備の安定した戦い方で無傷の13戦全勝。同階級では最高の評価を得る絶対王者的な存在だ。21年2月にはカケ技に定評がある東山カキヤー☆大芽號(現・全勝工業カキヤー)との約32分にも及ぶ激戦を制し長期戦も戦える万能ぶりを発揮し、まるで死角などないように思えた。
だが、初防衛戦では闘勢心玖留のリーチを生かした戦術に攻めあぐねるなど思いのほか苦戦する姿も見られた。直近では新春南部大闘牛大会でロッドマンに13分ほどで勝利している。秋の全島闘牛は諸事情で対戦取り消しとなり、手放さざるをえなかったタイトルをもう一度手中に収めることができるのか。
対する二代目武捷龍(にだいめぶしょうりゅう)は、大きく内側に湾曲したガン角を持ちワリ技を得意としている。22年3月の伊波大闘牛大会で初陣を迎え、泰山利夢を破って白星スタートをきった。続く2戦目にロッドマンと対戦し36分30秒の持久戦を制している。そこから願寿、白電、航進会斬鉄を下して5連勝としたのち、第119回秋の全島闘牛大会に選抜され全島大会初出場を果たした。しかし、カケ技の名手として名高い南星朱蘭の前に初黒星を喫した。復帰戦となった2月の旧正月大闘牛大会では、敗戦の影響もなく名遁怒(なとんどー)を1分余りで撃破。5勝1敗の好成績が評価されタイトルマッチに抜てきされたようだ。
両牛ともにワリ技を得意としていることから、激しい角さばきの打撃戦が予想される。いかに相手のペースに巻き込まれず、自身の間合いで試合を展開していくかが勝敗の鍵となりそうだ。
■シーの3番 友羽総業覇鬼×しんちゃん
カケ技と速攻 目離せぬ一戦
今大会でも特に注目を集める軽量級優勝旗争奪戦は、技巧派の友羽総業覇鬼(ゆうはそうぎょうはき)にスピードスターの異名を持つベテラン牛しんちゃんが挑戦する。
友羽総業覇鬼は、2022年9月の屋慶名組合結成大闘牛で弱冠3歳という若さだったが天翔うさぎを破り初陣を飾った。同年11月には、2戦目にして第117回秋の全島闘牛大会に初出場しファイテング大悟を撃破。続く3戦目はベテランの玉村105号を一蹴。3連勝の快進撃で臨んだ第118回春の全島闘牛大会では、5戦全勝の北部を代表する実力牛・勝山天王と25分58秒の激闘を繰り広げ、接戦の末に敗れ初めて土がついた。
その後は、復帰戦で東照宮を難なく下し、昨年11月の第119回秋の全島闘牛大会では4連勝と評価がうなぎ上りだった武玄大力に反撃の隙すら与えない完封勝ちを収めた。この勝利で自信を取り戻した友羽総業覇鬼は今年1月の新春南部大闘牛大会で軽量級優勝旗を奪取すべく彪獣王に挑んだ。無謀と思われた挑戦だったが、軽快なフットワークと左右の角を駆使した変幻自在のカケ技で彪獣王を圧倒。弱冠5歳1カ月という異例の若さでの戴冠を成し遂げた。
対するしんちゃんは、17年のデビュー戦を赤獣王と対戦し6分13秒で黒星スタート。その後は凱旋門、太尊王Zに勝ち、剛修彦星、石山聖空宝志みおりに負け、徳之島へ移籍している。徳之島では結果を残すことができず、22年に再度沖縄へトレードされ現牛舎に所属することとなった。沖縄復帰戦こそ不戦勝だったが、その後は最大の持ち味であるスピードを生かした攻撃で9連勝と破竹の勢いだ。
また、人気のゆえんである、息つく暇もない波状攻撃から超高速の腹取り速攻は多くのファンを魅了している。これまで15戦以上のキャリアを持つベテラン牛だが初のタイトル挑戦となる。やっと巡ってきたこの千載一遇のチャンスを是が非でもつかみ取りたい。
見どころは、友羽総業覇鬼のカケ技としんちゃんの高速速攻とどちらが勝るのか、技と速さの勝負となるのではないだろうか。