航空自衛隊南西航空方面隊の谷嶋正仁司令官(空将)が1月23日、琉球新報のインタビュー取材に応じ、南西諸島周辺の他国による活動や、対領空侵犯措置の状況について語った。谷嶋司令官は、同方面隊が実施する対領空侵犯措置のほとんどが中国機に対するものだと説明し「平時に領空侵犯は絶対にさせない。万が一の際、抑止力として機能するため、隊員はそれぞれ職責を果たしている」と強調した。
―南西諸島周辺の状況を聞きたい。
「中国の航空戦力は、南西地域を含めた東シナ海で活発に活動し、範囲をさらに拡大している。海空軍の爆撃機や警戒艦船の航空機だけではなく、最近はUAV(無人航空機)の活動が拡大している。UAVは2018年ごろに東シナ海での活動を初確認して以降、昨年8月には先島諸島で、11月には沖縄本島東側で活動を確認した。無人機は飛行性能がとても良く、飛行時間が非常に長い。これに対応するために連続して戦闘機を運用し対処している」
「中国艦船で、特に注目しているのが空母だ。昨年5月上旬から中旬にかけて、沖縄本島の南側から石垣の南側にかけて活動し、登載している戦闘機、ヘリコプターが延べ300回以上離着陸した。12月中旬~下旬に空母が沖縄本島と宮古の間を抜け、大東周辺や沖ノ鳥島の南方までの広い範囲で活動した。自衛隊の対領空侵犯措置のペースも上がっている」
―危惧(きぐ)することは。
「中国は軍事力の近代化、強化をすごいスピードで進め、日本の防衛力と中国の軍事力で格差が開いており、この状態が継続することを危惧している。その中で、昨年度末に防衛戦略3文書、防衛費の増額によって格差が是正される方向となったことは心強い」
―南西防衛で今後必要な能力、装備は。
「弾道ミサイルや巡航ミサイルが長射程化していて、中には領土の中から(日本の領域内に)届いてしまうものがある。そうなれば、ミサイル防衛だけではなく反撃能力がないと、有効的な抑止力、対処力として機能することができない時代になった。例えばスタンドオフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力は、南西地域にとっては必須の能力ではないか」
―台湾を巡る有事の可能性をどうみるか。
「中国の活動が活発化、範囲も拡大化しているところをみると、中国は自ら主張したところを実現するために実際に行動する国だという認識をもっている。指揮官としてあらゆる状況を想定して考え、訓練、準備をしていかないといけない。だが、それが具体的に、いつ、どういう時なのかは予断をもって言えない」
―急激な防衛力強化の方針に、県民の理解は追いついていない。沖縄戦を経験し、自衛隊へ複雑な県民感情もある。
「南西域はわが国防衛の要だと思っている。対領空侵犯措置も、多大なエネルギーがかかっているが、平時は領空侵犯は絶対にさせない。南西の隊員は抑止力として機能するために、万が一の場合は対処力として機能するために、それぞれの職責を果たしている。(県民には)丁寧に説明する必要がある」
―米軍は嘉手納基地からF15戦闘機を撤退させ、ローテーション配備とした。日本を防衛する上で、米軍の戦略、関係性をどう捉えるか。
「今回のローテーションは米軍の考えでやっていて、何か言うことはないが、大事なのは自分の国は自分で守るということだと思う。米国は絶対に横にはいるが、前にはいない。日本を防衛する意味では、絶対にわれわれ(自衛隊)がやらなければならない」
(聞き手 池田哲平)