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給付型奨学金を新設するも応募ゼロ 沖縄・南城市 関係者「早めの募集、周知を」 「他との併用不可」も課題


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南城市給付型奨学金の当初の募集要項

 【南城】南城市が本年度新設した給付型奨学金制度に申込期間内の応募がなく、9月に再募集することがこのほど分かった。市は応募がなかった理由を、2020年から始まった日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金と授業料などの減免制度に学生の利用が流れているとする。予備校などを運営する尚学院で、高校生の大学進学を支援する本原泉さん(62)は「生徒は早めの募集で奨学金の決定通知を受け、受験に集中したい。募集時期や対象が事前に分かるような一覧表がほしい」と指摘している。

 市は7日、再募集をホームページ上で発表して要項を公開した。新たな募集期間は9月4日~22日。

 対象は当初、2023年3月1日時点で、市内在住の高校在学者または卒業後2年を経過していない高校卒業者で同年4月に大学などに進学する人で(1)住民税所得割非課税世帯(2)生活保護受給世帯(3)児童養護施設入所者(4)里親世帯―などに該当する人。通う大学が県内の場合月4万円、県外だと月5万円を、大学を卒業するまで給付する。新規の給付人数は1年度あたり5人以内。他機関の給付型奨学金との併用は不可。8月7日の新たな募集では、ことし6月1日時点で大学の1学年などに在学する者のみを対象としている。

奨学金利用について話す尚学院の本原泉さん=7月28日、那覇市泊

 当初の募集期間は23年4月3日~21日で、奨学生に選考された場合、6月と10月にそれぞれ6カ月分を支給する予定だった。市は募集要項を市のホームページや広報誌に掲載し、昨年12月に近隣の高校18校に募集に関する通知を送ったという。

 応募資格に関する問い合わせが5件あったが、いずれも対象に該当せず、応募に至らなかった。今回の再募集で所得制限などの変更はなかった。

 JASSOの奨学金は進学前年の4月下旬から申し込みを開始するが、各市町村が設ける奨学金はそれぞれ募集時期が異なる。本原さんは「生徒は大学進学にかかる資金の手だてを早めに決めて受験に集中したい。市町村の奨学金は単発で案内が来て、1件ずつ要項を確認し掲示板に貼り、生徒の耳に入るのには時間がかかる」と話す。

 在住の市町村以外の高校に通っている生徒もいる。各高校に広く通知を送り、奨学金の一覧表や、市町村のHPに昨年度の募集要項を載せておくだけでも、子どもたちは自分の住む自治体にどんな奨学金があるのかを知り、奨学金の取捨選択ができるという。

 市町村の給付型奨学金は他機関の給付型奨学金と併用不可が多い。本原さんは「たとえ少額でも、給付型奨学金が併用可能であれば、申し込みたい人は今より増えるだろう」と指摘した。
 (上江洲仁美)