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芸歴50年の至芸 照喜名進が17年ぶり独演会 高音の響きに師への感謝込め


芸歴50年の至芸 照喜名進が17年ぶり独演会 高音の響きに師への感謝込め
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 琉球古典音楽安冨祖流絃聲会会長で師範の照喜名進による17年ぶりの独演会「語ゐたや 謡ゐたや」が2日、浦添市の国立劇場おきなわで開かれた。叔父の照喜名朝一を師に、50年以上の芸歴で積み重ねてきた至芸と心を存分に披露した。

 「二揚仲風節」の独唱で幕が開けた。歌い出しから伸びやかで情熱的な高音が響き、一気に歌の世界に引き込まれた。師である朝一の「仲風」に憧れて古典音楽の道に入ったという進。冒頭で高音が続く難曲を「師匠への感謝の気持ち」としてあえて幕開けで歌い上げた。本公演で二揚調はこの曲のみ。高音の響きが素晴らしかっただけに、二揚調の曲ももっと聞きたかった。

 続く本調子の「仲村渠節」「赤田風節」の独唱では、中音域の音色が心地よかった。安冨祖流の特徴的な所作である「手様(てぃーよー)」のなめらかな動きに見とれた。「語りたや 語りたや」と歌う「今風節」。本公演のタイトルは「今風節」の歌に進の思いを添えたものだという。まろやかな歌声には、時間を忘れて友と語らう情景が浮かんだ。

フィナーレのあしび歌三線で見事な掛け合いを披露する照喜名進(中央)

 舞踊地謡も多く務める進。各流派の家元らの歩みや舞に自然と寄り添う歌声を披露した。「本花風」は、玉城流翔節会家元の玉城節子が舞った。「下出し述懐節」ではしっとりと芯のある歩みとつややかな歌声が美しく合わさった。「諸屯」は、玉城流二代目家元の玉城秀子が踊った。ゆったりとして抑制的な舞と情感たっぷりの歌声が、女性の内に秘める熱情を表現した。

 朝一が作詞作曲を務めた「初ムーチー」は、作舞した玉城流てだの会家元の玉城千枝が踊った。ムーチーを作り家族の幸せを祈る女性の様子を、千枝が芝居心ものぞかせながら生き生きと舞った。

 フィナーレは「あしび歌三線」。進の古里である知念知名に伝わる「あしび歌」を披露した。軽快な三線の演奏と、楽しい歌の掛け合いに会場は手拍子や指笛が鳴り響き、大盛り上がりの中で幕を閉じた。師の教え、舞踊地謡での研さん、自らを形作る郷里の芸能など、進が培ってきた至芸の全てを堪能する舞台となった。

(田吹遥子)