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「地元客への浸透大事」 SNSで若者向け周知強化 集客の課題<新時代・国立劇場おきなわ20年>6


「地元客への浸透大事」 SNSで若者向け周知強化 集客の課題<新時代・国立劇場おきなわ20年>6 国立劇場おきなわのファンイベントで立方の演者と触れ合う観客ら=2015年10月
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 国立劇場おきなわのプレイガイドの電話が鳴りやまない日がある。若手・中堅の人気男性舞踊家たちが一堂に会す「男性舞踊家の会」のチケット発売日だ。開場から20年がたち、観客それぞれが“推し”の舞踊家を見るためにと、劇場に通う流れも定着する。

 同劇場主催公演の入場者数は開場した2004年で1万3498人、その後は認知の高まりと共に観客数も右肩上がりで、15年に1万8372人とピークに達した。主催公演の売上率は、「組踊初演300年」の節目の年だった19年に74.4%とピークに。コロナ禍の影響があった21年を除くと、06~22年まで60~70%台を維持している。

 一方、劇場のファンである「友の会」会員は、06年から12年までは増加していたが、それ以降はコロナ禍を除いても、横ばいか減少の傾向にある。担当者によると、統計を取ったわけではないが「60代から70代の女性が多いという印象」とみる。観客全体でも同様の特徴があるとする。

 近年劇場は、県外や国外への周知にも力を入れてきた。だが、玉城満常務理事は「まずは足元である地元客への浸透が大事だ」とする。「コアなファンはいるが、琉球芸能に触れた機会がないという人が県内にはまだ多い。もっと気軽に見に行く文化ができて、芸能を知る県民が増えれば、外から来た人にも広げることができる」

 玉城理事の就任後、国立劇場おきなわでは、公演情報が定期的に届く公式LINE(ライン)を始めた。劇場のユーチューブ・チャンネルでは、ユーチューバー「リュウカツチュウ」など若手実演家が公演の解説をしたり、舞台メークを披露したりする動画を配信。県内の若者や初心者向けの周知を強化している。

 最近、劇場に通うようになった那覇市に住む石嶺真理子さん(35)は、1~2か月に1回は公演に足を運ぶ。石嶺さんは幼少期に琉舞を習っていたり、学生時代に学んだりしたわけでもない。昨年3月の首里城復興イベントで見た組踊をきっかけに、琉球古典芸能にハマった。その後玉城朝薫を主役に描いた現代版組踊「琉球伝信録」を見に行き、さらに感銘を受けた。

 石嶺さんは「沖縄にも独自の素晴らしい芸能があるのに、きちんと見たことがなかった」と言う。物語展開、琉歌、歌、踊り…。「情報量が多いことも組踊の好きなところ」。組踊の字幕を読み、唱えを聞いているうちに「うちなーぐちや特にすいくとぅば(首里言葉)をもっと学びたいと思った」とも話す。

 ただ、まだ公演情報に接する機会が少ない点に言及する。「琉球芸能に関する公演情報がもっと入手しやすくなれば」と注文した。

 (田吹遥子)