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絶妙に恋心表現「饒辺真山戸」復活公演 伝統組踊保存会


絶妙に恋心表現「饒辺真山戸」復活公演 伝統組踊保存会 物売りに身をやつして玉かね(右・金城真次)の元を訪れる饒辺真山戸(左・嘉数道彦)=5月26日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 伝統組踊保存会による復活組踊公演「饒辺真山戸(ゆふぃんめーまとぅ)」が5月26日、浦添市の国立劇場おきなわであった。組踊では珍しい恋物語を、ドラマチックな展開で楽しませた。

 首里の高貴の家柄である饒辺真山戸(嘉数道彦)と平安座大主の一人娘である玉かね(金城真次)は、花見で出会い、再会を約束したが親の反対で会えない。上原の長者(石川直也)に説得された饒辺真山戸は物売りに身をやつして玉かねに会いに行くが、玉かねは「人違いだ」と断る。何度も食い下がる真山戸とかたくなに義理にこだわる玉かねのやり取りは見応えがあった。

 落ち込んだ真山戸は、上原の長者の説得もむなしく、荒海に身を投げる決意をする。そのことを知り、悲しむ玉かねの元に真山戸が登場。船遊びをしていた屋慶名大主(親泊久玄)らに助けられたのだった。最後は2人で手を取り合い、ハッピーエンドとなる。

 金城と嘉数の演技は、抑制的でありながらも絶妙な表情の変化と所作で恋心を表現した。一方、ラストの展開は唐突感があった。真山戸を助けた屋慶名大主は序盤で船遊びに出かける場面のみに登場し、真山戸を助ける部分が描かれなかったためだろう。台本に沿った展開ではあるが、経緯を把握するのに時間を要した。

 このほか立方の出演は、仲村圭央、島袋浩大、知花令磨、下地心一郎、髙井賢太郎、伊藝武士。地謡は歌三線を仲嶺伸吾、金城力、花城英樹、大城貴幸。箏は手登根廣美、笛は入嵩西諭、胡弓は川平賀道、太鼓は福原敬。

 (田吹遥子)