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<書評>『スケッチ画で楽しむ沖縄の植物』 末吉公園、新手の散策ガイド


<書評>『スケッチ画で楽しむ沖縄の植物』 末吉公園、新手の散策ガイド 『スケッチ画で楽しむ沖縄の植物』植物観察とスケッチ画を楽しむ会編 ボーダーインク・3080円
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 那覇市の末吉公園は市街地にあるにもかかわらず、まとまった森の自然が残る場所です。手軽に行けるとあって、自然とのふれあいを求めて散策をする人が増えています。

 本書はそんな末吉公園に特化した植物の本です。ボーダーインクからはこれまでに、散策マップと図鑑を組み合わせた「那覇・末吉公園を歩く 楽しい植物ウォッチング」が出版されていますが、本書はそこにスケッチ画を提供していた人たちが作ったスケッチ画集です。194種に及ぶ植物の詳細なスケッチ画は、全体を捉えたものから花や実まで種類ごとに掲載され、末吉公園の植物図鑑第2弾ともいうべき内容になっています。

 スケッチ画は植物の特徴や構造を観察し、その結果を記録したものです。重要な情報がしっかり描かれるので、写真より分かりやすいと言われています。きれいなスケッチ画は眺めるだけで楽しいのですが、図鑑やネットの写真と見比べてみるのがおすすめです。見比べることで専門家の観察や識別のポイントを追体験として学ぶことができます。イネ科やヤシ科など種類が多く掲載されている植物については、そのまま識別図鑑としても使えます。

 植物スケッチ画の項目はI栽培植物、II草本植物1、III帰化植物、IV在来植物、V草本植物2、VIつる植物―にまとめられています。エリアによって全く違う様相を見せる末吉公園の特徴を反映したまとめ方になっていて、I~IIIは主に花壇や園路、広場などが整備された、開けた環境のエリアで見られる植物(多くが外来種)であり、IV~VIは主に森の自然が残された環境のエリアで見られる植物(多くが在来種)です。どのエリアを散策した(する)のか、そこでどんな植物を目にした(する)のかを意識すると、公園の自然の見え方が変わってくるはずです。そういう意味では、新手の散策ガイドとしても使えそうです。

 末吉公園の自然散策や植物に興味がある人は、手に取ってみてください。野外に持ち出すには多少かさばりますが、コラムもあって色々楽しめる本です。

 (藤井晴彦・沖縄自然環境ファンクラブ)


 植物観察とスケッチ画を楽しむ会 末吉公園の植物観察を続けていた神谷保江がより分かりやすい表現のために、経験者へ植物のスケッチ画を依頼したのが始まり。神谷に加え垣花久美子、渡久地良子、當間和子がスケッチ画、写真、文章、編集などを担った。