昨年11月に初めて訪れたフィンランドは、気候や風土、人々の優しさに魅了され、すっかりとりこになってしまった。次なる渡航のチャンスをうかがっていたら、思ったよりも早く実現することができた。8月24~31日に再びフィンランドのヘルシンキを訪れた。
今回はスカンジナビア・ニッポンササカワ財団、公益財団法人沖縄県立芸術大学芸術振興財団、本学教育研究支援基金の助成を受け、本学の塚本一実教授(作曲)と卒業生でフルーティストの亀島伶来氏、筆者の3人で全4回の公演を行った。
「琉球古典音楽の新しいカタチとデザイン」をコンセプトに、筆者は昨年度よりフルートと歌三線による琉球古典音楽のパフォーマンスをしている。詳しくは、亀島氏の寄稿を楽しみにしたい。
新しいカタチとデザインとして筆者は、今回左手のピアニスト舘野泉氏とも共演することができた。塚本教授が舘野氏と親交があり、「面影(うむかじ)~琉球古典音楽《首里節》をベースにして~」(塚本作曲)を世界初演することになったのである。会場は会員制クラブ「The Helsinki Finnish Club(ヘルシンキ フィニッシュクラブ)」で行った。会場は落ち着いた空間で、かつてはフィンランドを代表する作曲家シベリウスも訪れていたという。
舘野氏の静かなピアノの調べと共に歌三線が加わり、二つのパルスはまさに北欧と南国による織物を成すかの如く「瞬間の美」を表現することができたのではないかと述懐する。琉歌は、作詞家の沖えいじ氏による「風に波立ちて 崩る水鏡 面影や抱きて 袖を濡らす」を用いた。歌意は、「水面に風が波立てて崩れる水鏡、面影だけが残されて泣けて仕方ないのです」とあり、首里城復興の思いも込め演奏した。
会場には、岡田隆在フィンランド日本大使館特命全権大使にもご鑑賞いただき、クラブ会員からも多くの称賛をいただいた。
終始笑顔の舘野氏と共に共演できたことは、非常に貴重な経験となった。約40歳の年齢差は、筆者にとっても「生涯現役」を貫いていくまさに「これから」を考えるきっかけともなった。
(山内昌也、県立芸術大学教授)