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【寄稿】フィンランドで響く琉球古典音楽(下) フルートと歌三線のパフォーマンス 単旋律溶け合い「共存」


【寄稿】フィンランドで響く琉球古典音楽(下) フルートと歌三線のパフォーマンス 単旋律溶け合い「共存」 カンピ礼拝堂でリハーサルをする亀島伶来(左・筆者)と山内昌也氏=8月29日、フィンランドヘルシンキ(筆者提供)
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 8月24~31日、初めてフィンランドのヘルシンキを訪れた。海外には今回2度目で、高校生以来である。その時はウィーンまでの乗り継ぎでヘルシンキのヴァンター空港は利用しているが、入国はしていないため、私にとってフィンランドは未知の地であった。

 私は昨年より歌三線奏者の山内昌也氏から誘いを受けて、フルートと歌三線による琉球古典音楽の演奏を行っている。コンセプトを「琉球古典音楽の新しいカタチとデザイン」とし、その際私は「五線譜」ではなく「工工四」(三線の楽譜)を使用している。これにより、古典音楽本来の旋律を崩すことなく(琉球)笛のように演奏できると考えた。さらには、フルートという楽器の特性を最大限に生かすべく音域の工夫や、私なりに「節入り」を意識し、新しい古典音楽の響きを追究してみたいと思った。山内氏はこのパフォーマンスを「共演」ではなく「共存」と称した。

 この「共存」をヘルシンキで披露するに当たり、いろいろな楽器で音を重ね、ハーモニーを作り演奏することに美しさを持つ西洋クラシックの本場であるヨーロッパで、二つの楽器とはいえ単旋律というシンプルな演奏が受け入れられるか不安だった。

 演奏は「カンピ礼拝堂」で行った。礼拝堂はフィンランドの木でできており、防音加工がされ、ここが都市とは思えないような静寂を得られる場所であった。当日は定員を大幅に超える来場があったのにもかかわらず、誰もいないかのごとく演奏以外は無音だった。琉球古典音楽「伊野波節」も演奏し「無蔵連れてのぼる」の部分は、私のソロであった。フルートの華やかな音と山内氏の包み込む歌声が、礼拝堂にともったろうそくの火も揺れ、聴衆だけでなく建物(空間)も一体となっている感覚を味わった。

 来場者からは「とても新鮮で二つの楽器が溶け合っていました」などの言葉をいただいた。

 琉球古典音楽の魅力を発信すべく「共存」を通じ、私なりに琉球古典音楽を多くの方に知ってもらいたいと感じる旅となった。

 (亀島伶来、フルーティスト)