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サーチファンド 「顔が見える」事業承継 地域に経営者候補呼び込み


サーチファンド 「顔が見える」事業承継 地域に経営者候補呼び込み サーチファンドの仕組み
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 事業承継の新たな解決策として、経営者を目指す人材と後継者に悩む中小企業をつなぐ「サーチファンド」と呼ばれる手法の活用がじわりと広がっている。誰が経営者になるのか、顔が見える状態で引き継げるのがその理由だ。中小企業の廃業に懸念を強める自治体が地域に経営者候補を呼び込もうと、サーチファンドと二人三脚で取り組むケースも出てきた。
 サーチファンドは経営者候補である「サーチャー」がファンドの支援を受けて投資先企業の株式を取得し、自ら経営を行う仕組みだ。2020年に日本政策投資銀行や日本M&Aセンターなどが出資して設立したサーチファンド・ジャパンは代表格として知られ、これまで5人のサーチャーが事業承継を実現した。
 その一人が大富涼さん(30)だ。「経営をやりたいという思いがずっとあった」といい、22年にゲームセンターの景品を手がけるアレスカンパニー(千葉県松戸市)を承継して社長に就任した。前職の大手コンサルティング会社での経験を生かして、営業人材の増員や販売管理ツールの導入などで企業価値向上に取り組み、23年にアミューズメント施設を運営するGENDA(ジェンダ)の傘下に入った。
 帝国データバンクによると、後継者不在率は23年に53・9%。経営者の高齢化で廃業も選択肢に入り、放置すると雇用が失われかねない。
 福井県はサーチャーが県内企業を視察する際の旅費を50万円まで補助する制度を導入。事業を承継し、新たに従業員を雇用する場合は300万円の奨励金を支給する。東京都は都内の中小企業を対象にサーチファンド形式で投資を行うファンドを設立した。
 サーチファンド・ジャパンの伊藤公健社長は「第三者に譲渡するにしても後継者が誰なのかを気にするオーナーは多い」と手応えを示している。