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コロナ禍から観光回復で再び「高い伸び」 住宅需要は底堅く 「高い投資マインド」今後の見通しは?<2024沖縄公示地価>


コロナ禍から観光回復で再び「高い伸び」 住宅需要は底堅く 「高い投資マインド」今後の見通しは?<2024沖縄公示地価> 商業地で県内最高価格地となった那覇市久茂地3の1の1「日本生命那覇ビル」=26日、那覇市久茂地
この記事を書いた人 Avatar photo 謝花 史哲

 2024年1月1日時点の公示地価で沖縄は全用途が前年比プラス5.5%上昇した。全国2位の伸び率で、用途別では住宅地が全国トップの同5.5%だった。20年まで4年続けて全国1位の水準で上がっていた県内地価は、新型コロナウイルス感染症の影響で21年に大きく縮小したものの、底堅い住宅需要でプラスを保ち、コロナ禍からの観光需要の回復を背景に再び高い伸びにつながった。県内は今後も商業施設やホテルの大型案件が持ち上がっており上昇基調は継続する見通しだ。

 全県的に広がった住宅需要が地価上昇を引っ張った。23年1~10月の県内土地取引件数はコロナ禍前の水準を下回るも前年同期比1.2%増の1万2563件だった。土地取引面積は25.6%減となったが、県地価公示分科会は「大型案件が多かったとみられる」と分析し、高い投資マインドが価格を引き上げたとみている。

 ■変化

 コロナ禍で県内の住宅需要は買い手の不安感と売り手の先行き期待感が入り交じり、様子見の傾向が強かった。それでも全国最下位の持ち家比率を背景に、価格を抑えられる小規模木造住宅の普及や分譲住宅の増加で地価の上昇傾向は保持していた。

 その延長で23年はコロナ5類の移行で制限がなくなったことで経済活動が活性化。商況回復で労働市場も上向き、同分科会は「住宅購入や投資マインドの回復という市場参加者の行動の変化があった」と解説した。

 那覇市の住宅地平均価格は前年比1.8ポイント増の4.0%で上昇率を拡大し、1平方メートル当たり19万2300円となった。県庁所在地別でみると神戸市や広島市を上回る全国8位の単価で中心地として潜在力の高さから地価上昇が続いた。

 市中心部は平均的な家族世帯が購入可能な水準を超えた高価格地帯でも県外の個人投資家や移住者など引き合いの強さがあり、そのまま比較的割安な市郊外へと波及しているという。

 市外でもコロナ禍からの回復で超低金利という融資環境やハウスメーカーなど売り手側の働き掛けが買い手を刺激。新設着工住宅数は17年をピークに減少傾向だが、23年1~10月は前年同期比12.5%増の8299件と増加に転じた。

 ■広がり

 観光客の大幅増で商業地の伸び幅も拡大した。観光地を中心に収益力の回復が鮮明に。県民の高い消費力も重なり店舗需要が高まって上昇地点が増加した。

 那覇市の国際通りは人流回復で投資需要が旺盛となり、おもろまちはホテル開業や大型店舗の出店計画などが地価を引き上げた。宮古島市も観光客の大幅な増加やリゾートホテルの新規開業などが島外資本の流入を誘引。中心商業地では供給不足もあり、トップの上昇率につながった。

 調査が1地点のみの本部町は前年1.1%から8.2%と宮古島市に続く伸び率。同地点は美ら海水族館への動線上で、観光客向け事業展開が過去にない上がり方につながったとみられる。

 一方、日銀のマイナス金利政策解除による17年ぶりの利上げには警戒感も漂う。同分科会代表幹事で、国土鑑定センター社長の仲本徹不動産鑑定士は「住宅ローンは固定型より(利上げが影響する)変動型が多いと聞く。不動産市場への影響は注視が必要だ」と指摘した。

 それでも県内は北部のテーマパーク建設や石垣市の複合施設など観光関連でも目玉となる複数の事業計画が今後も予定される。資材高騰や金融政策の変化など懸念材料はあるものの「県経済の先行きの強さ」(仲本不動産鑑定士)が不動産市場を下支えしそうだ。

 (謝花史哲)