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補正予算巡り綱引き 衆院解散判断にらみ 24年度予算成立


補正予算巡り綱引き 衆院解散判断にらみ 24年度予算成立 国の補正予算規模の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2024年度当初予算の28日成立を受け、今後は補正予算編成に踏み切るかどうかが焦点となる。与党からは、能登半島地震の被災地支援や物価高対応で必要性を訴える声が上がる。ただ新型コロナウイルス対策などで一段と悪化した財政を懸念する慎重派の議員もおり、岸田文雄首相の衆院解散判断をにらんで綱引きが本格化しそうだ。
 (3面に関連)
 24年度当初予算では、能登半島地震の対策に充てられるよう一般予備費を23年末に閣議決定した水準から倍増して1兆円を計上した。一方、物価高騰対策などに充当する予備費は23年度当初予算の4兆円から1兆円に大きく減額した。
 これに対し、与党の積極財政派の議員らからは、補正予算編成を求める声が年初から絶えない。地震の被災状況も少しずつ判明。政府の推計では、損壊した住宅や工場、道路などの被害額が石川、富山、新潟の3県で1兆1千億~2兆6千億円程度とされている。
 被災地支援では既に23年度予算の予備費から約2767億円の支出を決定しているが、それでも復興に取り組む与党幹部は「当初予算の一般予備費1兆円だけではとても足りない」と訴える。
 物価高に関しても、自民党議員から「まだまだ対策の必要性はある」との声が上がる。今年4月末が期限のガソリン補助金は5月以降も延長する方向。既に6兆円を超す予算が投じられ、巨額の財政負担を問題視する声もあるが、買い物や通勤に車が欠かせない地方の実態を無視できない政治的事情が透けて見える。
 こうした声に押されて財政支出が拡大することに、財務省や財政規律派の議員らは警戒を強めている。同省幹部は補正予算を編成して被災地を支援するには「時間がかかる」として、より迅速に対応できる予備費の活用で進めたい考えを示す。物価高対策も「際限がない」として省内には否定的な声が多い。
 コロナ禍で相次ぎ編成された補正予算のため、財政は悪化が進んでいる。財務省によると普通国債残高は24年度末に1105兆円に達し、対国内総生産(GDP)比180%に上る見通し。さらに補正予算を組めば一段と悪化しかねない。ただ岸田首相が衆院解散・総選挙に踏み切れば、有権者を引き付けようと党内で補正予算を求める声が高まるのは必至だ。