有料

サボテンに未知の可能性 食料、温暖化解決へ注目 中部大が研究施設新設


サボテンに未知の可能性 食料、温暖化解決へ注目 中部大が研究施設新設 中部大で育てているウチワサボテンを手にする堀部貴紀准教授 =17日、愛知県春日井市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 愛知県春日井市の中部大は4月、サボテンの産業利用に向け研究センターを新設した。生命力が強く食用や飼料用にでき、二酸化炭素(CO2)吸収量も多いとされるため、将来の食料危機や地球温暖化を解決する作物として注目を集める。センター長の堀部貴紀准教授(応用生物学)は「まだまだ未知の可能性があるはず。潜在能力を引き出したい」と意気込む。
 元々バラの研究をしていた堀部さんは2015年ごろ、国内有数のサボテン生産量を誇る春日井市のイベントで、食用サボテンに出合った。日本では観賞用として流通してきたが、メキシコやイタリアでは野菜として食べられ、市でも活用に取り組んでいた。だが国内では認知度が低く、先行研究がほとんどない。「誰もやらないなら自分が研究したい」。堀部さんはメキシコや米国で栽培技術などを学んだ。
 食用のウチワサボテンは低栄養な土や40度を超える高温下など過酷な状況でも生育でき、乾燥にも多雨にも強い。苗の増殖が可能で栽培コストが低く、家畜の飼料にも使われる。17年には国連食糧農業機関(FAO)が「世界の食料危機を救う作物になる」との声明を示し、各国が研究に乗り出している。
 食用以外にも用途は多彩だ。早く大きく成長するサボテンは、CO2の吸収量が広葉樹の2倍以上と高く、温暖化対策としても期待される。ほかにも人工皮革のビーガンレザーにも加工でき、種子オイルは化粧品にも使われる。
 作物としての育てやすさから、カンボジアでは地雷撤去後の土地をサボテン畑へ転用し、現地に産業を創出しようとする取り組みがあり、堀部さんも外部専門家として栽培指導に携わった。
 中部大の「サボテン・多肉植物研究センター」ではDNA解析や食品分析の専門家約10人が、基礎研究から企業と連携した商品開発までを担う。堀部さんは「サボテン研究は欧米に比べ、アジアで遅れている。春日井発の活用法を開発し、世界へ発信したい」としている。