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値動き荒く、市場に緊張感 日米金利差大、円安加速も 1ドル一時160円  


値動き荒く、市場に緊張感 日米金利差大、円安加速も 1ドル一時160円   ドル円相場を動かす可能性のあるイベント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 29日の外国為替市場で円相場が乱高下した。東京市場が祝日のため休場で、間隙(かんげき)を突くような荒い値動きとなった。午前に円安が進んで一時1ドル=160円台に突入したが、午後には154円台まで急反発。政府と日銀が為替介入に踏み切ったとの見方から市場に緊張感が広がった。物価高への懸念を背景に円安阻止を求める声は強いが、日米の金利差で円が売られやすい地合いに変わりはなく、政府は難しいかじ取りを迫られている。 (1面に関連)

祝日の波乱
 「(円相場の)激しい変動が国民経済に与える影響は看過しがたい」。祝日で職員もまばらな財務省内で、夕方に記者団の取材に応じた神田真人財務官は強調した。介入の有無は明かさなかったが、物価高などを念頭に決意をにじませた。
 円相場が一時160円の節目を突破したのは、日本時間の午前10時半ごろだった。平日であれば実需の円買いを入れる輸出企業などの取引参加者が少なかったことも、円急落の一因となった。
 ただ午後1時ごろには一転して円を買い戻す動きが強まり、155円台前半まで急騰。為替介入が行われたのでないかとの見方が市場で急速に広まり、午後4時半ごろには154円台まで戻す波乱の展開となった。

心理的天井
 三井住友銀行(在シンガポール)の阿部良太エコノミストは、市場参加者が少ない日本の休日に投機筋が幅広く円売りを仕掛けたと指摘。ただその日のうちに大きく押し戻されたことで「市場参加者に心理的天井ができ、短期的には一辺倒に円安が進むことはないのではないか」と指摘する。
 しかし、最近の円安の要因となっている日米の金利差が大きく開いている状況に変わりはない。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始が遅れるとの見方が出ている一方で、日銀が追加利上げに当面踏み切らないとみられているためだ。円相場は米国の経済情勢や金融政策の影響を大きく受けているのが実情で、為替介入の効果は一時的だとの見方も強い。
 今後も5月2日(米国時間1日)に米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策決定、3日に4月の米雇用統計発表と、円相場に影響を与えそうなイベントが続く。
 円安は輸入物価の上昇などを通じて国内物価を押し上げ、消費者の生活を圧迫する。支持率が低迷する岸田文雄首相にとっては、さらなる批判につながりかねない。ただFOMCや米雇用統計の結果によっては再び円安が加速する可能性もあり、ある経済官庁幹部は「短期間での円安修正は難しいのではないか」と頭を悩ませる。