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石炭火力 35年廃止合意 G7共同声明 継続にも道残す


石炭火力 35年廃止合意 G7共同声明 継続にも道残す G7気候・エネルギー・環境相会合の共同声明案のポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【トリノ、東京共同=田中大祐、矢野雄介】イタリア・トリノで開催の先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は30日、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策がなされていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意し、共同声明を採択した。
 G7の共同声明で石炭火力の廃止年限が明記されるのは初めて。ただ声明は廃止時期に関し「産業革命以来の気温上昇を1・5度に抑える(パリ協定の)目標に沿った時間軸」との表現も併記。廃止時期の明記に難色を示した国にも石炭火力継続への道を残した形。欧米との姿勢の違いが鮮明となった日本の今後の対応が焦点になりそうだ。
 再生可能エネルギーの割合が低く、東京電力福島第1原発事故の影響で多くの原発が停止する日本の電源構成は、火力発電への依存度が高く発電量の7割を占める。石炭火力は3割で、現在の国のエネルギー基本計画では30年度時点でも2割を見込む。政府は近く計画の改定に向けた作業を本格化させるが、声明が議論の方向に影響する可能性もある。
 石炭火力は高効率なタイプでも液化天然ガス(LNG)と比べてCO2排出量は約2倍。欧州を中心に全廃の機運が高まっている。
 国内の石炭火力発電は多くが排出削減対策がなされておらず、政府は燃焼時にCO2が出ないアンモニアなどを燃料に混ぜる実証段階の技術が排出削減対策に当たると解釈。将来も石炭火力を使う方針だが、CO2削減効果は限定的との批判もある。
 23年4月に札幌市で開かれたG7環境相会合でも石炭火力を廃止する年限を設けることを求める意見が出たが、日本が抵抗して見送りとなった。
 共同声明では、30年に世界の蓄電容量を22年比で6倍以上にし、核融合エネルギーの研究強化へG7に作業部会を設けるとした。CO2に限定した削減目標を掲げる中国などを念頭に、メタンなどを含む全温室効果ガスを対象とした次期削減目標を策定するよう求めた。