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電力の分離 実現見えず 顧客情報不正閲覧・改善計画1年


電力の分離 実現見えず 顧客情報不正閲覧・改善計画1年 関西電力不正閲覧問題の経過
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大手電力が新電力の顧客情報を不正閲覧した問題で、各社が再発防止に向けた業務改善計画を提出して12日で1年となる。問題の発端となった関西電力は組織風土改革を急ぐが、根幹には大手電力がグループ内で同業他社の顧客情報を保有する特異な状況がある。国は情報を持つ送配電子会社との資本関係を完全に切り離す「所有権分離」を検討するが、各社の同意は得られず実現のめどが立たない。
 関電の森望社長は4月の記者会見で、組織改革について「コンプライアンスの推進に取り組み、その進捗(しんちょく)に一定の手応えを感じている」と述べた。子会社と一体だった情報のシステムを約5年かけて分離する取り組みを開始。顧客情報の管理を厳格化する計画だ。
 関電は2022年12月、営業担当の社員らが子会社「関西電力送配電」のシステムにアクセス、関電以外の新電力と契約している一般家庭の顧客情報を不正閲覧していたと発表。東北、中部、中国、四国、九州、沖縄の各電力でも同様の行為が判明。経済産業省は関電や中国電の子会社など5社に電気事業法に基づく業務改善命令を出した。
 大手電力を巡っては電力販売でのカルテルも発覚。政府は公正な競争環境の確保に向け昨年6月の規制改革実施計画で所有権分離を「必要性や妥当性、長所・短所を含めて検討する」と明記した。
 業界は「需給逼迫(ひっぱく)や災害時に子会社との連携が重要で、関係維持が早期復旧や安定供給につながる」などと反発。財産権といった問題のハードルも高い。
 経産省は業務改善の取り組みについて評価を進めており、6月末をめどに結果を公表する見込みだ。兵庫県立大の草薙真一教授(公益事業法)は「電力自由化ではグループの内外で差別せずに取引する『内外無差別』の原則を守る必要がある。国は罰則強化の検討も進めるべきだ」とした。