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競争力失い崩れた屋台骨 低収益脱却、青写真なく  


競争力失い崩れた屋台骨 低収益脱却、青写真なく   シャープ本社(手前)と堺ディスプレイプロダクト(奥)=4月、堺市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 シャープがテレビ向けの大型液晶パネル工場の堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)を停止する。一時代を築いたテレビ向けの液晶パネルは競争力を失い、経営の屋台骨が崩れた。台湾・鴻海精密工業の傘下に入ってからも低収益から抜け出せない。新たな事業の柱を生み出すことが急務だが、成長の青写真は描けていない。 

液晶の次も液晶
「パネル市況変化への対応が遅れ反省している。家電事業に集中し、負のサイクルから脱却する」。シャープの呉(ご)柏(はく)勲(くん)社長は14日に開いた記者会見で、2年連続で巨額赤字に陥った原因を問われ、力なく語った。
 地上デジタル放送への移行に伴う液晶テレビの特需を追い風に、シャープは2004年に亀山工場(三重県亀山市)で量産を開始。店頭では「世界の亀山モデル」と書かれたテレビを求める消費者であふれ、シェアは急上昇した。
 「液晶の次も液晶」と当時のシャープ幹部は豪語し、09年に約4300億円を投じてSDPを稼働。だが、次第に在庫は積み上がり、稼働率は低迷が続いた。テレビの高級機種は韓国勢が得意な有機ELへシフトが進み、液晶は中国勢との価格競争を余儀なくされた。
 「作れば作るほど赤字」(関係者)だったテレビ向けの大型液晶パネルは9月末までに生産を終了する。タブレット端末やスマートフォン向けの中小型液晶も振るわない。ブランドの代名詞だった亀山工場と三重工場(三重県多気町)もリストラ対象で、光明が見えない状況に陥った。

ヒット商品なく
 「シャープペンシル」に代表される独創的な製品の開発がお家芸だったシャープ。00年のカメラ付き携帯電話や15年の無水電気鍋「ホットクック」のような消費者の目を引く商品を最近は生み出せていない。液晶事業の損失処理に追われ、新たな投資を捻出する余裕がないとみられている。
 27年度までの中期経営方針では、注力分野に人工知能(AI)や電気自動車(EV)を挙げた。設計を手がける担当者は、シャープの工場でEV関連の部品製造が可能かどうか検討していたと明かす。だが、現在の主力である家電との親和性は低く、業績がすぐに上向くと期待できるような商材は出てこなかった。
 鴻海はもともと液晶技術に目を付けてシャープを買収した経緯がある。その液晶の失敗で自己資本比率は9%まで落ち込み、14日の会見では鴻海による資金面での支援策は示さなかった。
 鴻海の劉(りゅう)揚(よう)偉(い)会長は会見にビデオメッセージを寄せ「最悪の時期は過ぎ去った。シャープと常に手を携える」とアピールしたが、金融関係者は「本当に面倒を見る気があるのか」と真意を疑い、先行きに懸念を示した。