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信頼揺らぐものづくり 「認証」不正 制度検証求める声も   


信頼揺らぐものづくり 「認証」不正 制度検証求める声も    認証不正問題の経過
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「日本車」が揺らいでいる。トヨタ自動車やホンダなど大手が、量産に不可欠な「認証」の手続きで不正を行っていた。トヨタグループのダイハツ工業、豊田自動織機の不正を受けた調査で明るみに出た不祥事で、日本の基幹産業の大きな汚点となる。一方、不正には国が定めた基準よりも高いレベルで安全性を確かめていた事例も含まれ、制度自体の在り方の検証を求める声も上がる。 (1面に関連)

根幹
 トヨタが3日夕、東京都内で開いた記者会見。登壇した豊田章男会長は神妙な面持ちで直立し、6秒間、頭を下げた。「お客さま、クルマファン、全ての方におわびする。本当に申し訳ない」
 トヨタ本体で不正はない―。日野自動車、ダイハツ、豊田織機とグループ内で相次いで不正が発覚しても「トヨタは大丈夫」という前提で対策が進んできた。今回、その前提は崩れた。
 トヨタの不正は6種類見つかった。例えば車の後方衝突試験で、日本の法規は1100キロの車台をぶつけてテストする決まりだが、海外基準の1800キロで行った試験データを流用した。エンジンの出力試験では、結果が基準を満たすよう意図的にデータを調整した。
 認証とは、メーカーが車の安全性を自ら検査し、そのデータを提出することで国から量産のお墨付きをもらう仕組みだ。このデータの正確性は安全な車を大量生産する根幹となり、車が安全だからといってルールを無視することはできない。トヨタが世界規模で「全方位戦略」を展開する中、負担がかかった認証の現場が、効率を重視した可能性は否めない。

解釈
 トヨタグループの不正を受け、国土交通省は1月下旬以降、85のメーカーに社内調査を指示した。マツダは6月3日、「マツダ2」など現在生産する2車種のエンジン出力測定試験で制御ソフトを書き換える不正を明らかにした。
 記者会見したマツダの毛籠勝弘社長によると、エンジニアは正しいことをしようとしているが業務手順書が不十分で、自己流の解釈をしたという。「現場に負担をかけてしまった」とし、改善に取り組む考えだ。
 この日はホンダやヤマハ発動機、スズキも不正を報告したと続々と公表した。

驚き
 相次いだ不正発覚に、国交省関係者は驚きを隠せない。不正を監査などで見抜けなかった形だが、国交省幹部は「通常は国側に提出する必要がない書類まで精査させたら判明した」と困難さを強調する。
 認証制度自体の信頼性も問われかねないが、この幹部は「国際的な基準に沿って構築している。日本が諸外国と比べ厳しい、緩いといったものではない」と述べるにとどめた。「メーカーには不正を申告するならこの機会だぞ、と伝えてきた結果こうなった」とも語った。
 トヨタについては、現時点でグループ共通の問題点があるとは見ていないとした上で、「ダイハツのように短期開発のしわ寄せで現場が不正に手を染めたことがないか注視していく」とした。
 一方、認証制度自体の課題も指摘されている。不正を行ったメーカー側は本音を口に出せないが、時代遅れの規定が残っていたり、メーカー側に解釈を委ねる不透明な基準があったりすると話す関係者もいる。自動車評論家の国沢光宏氏は「見直しは必要だが、基準を厳しくし過ぎると自動車メーカーは国際競争力をなくしてしまう」と、慎重な議論を求めた。