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コロナ後需要に対応後手


コロナ後需要に対応後手 旅客機用燃料供給のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 旅客機用の燃料不足が各地の空港で深刻化していることが明らかになった。新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた訪日客が月300万人台に急回復し、増便需要が全国的に高まる一方、燃料の供給体制が後手に回っている状況だ。インバウンド(訪日客)需要をみすみす取りこぼす事態は、地方創生にとって大きな痛手となりかねない。
 政府観光局によると、今年3月に日本を訪れた外国人客数は308万人となり、単月の最多記録を更新した。翌4月も304万人と過去2番目の高水準を維持した。
 年間で見ると、2023年は2506万人に上り、新型コロナが流行した21年の24万人から急回復した。足元の円安基調も追い風となり、今後も地方経済のけん引役としてインバウンド消費への期待は大きい。
 一方、旅客機を含む航空機向け燃料の生産水準はコロナ前に戻っていない。経済産業省によると、19年度に1561万キロリットルだった国内生産量は20年度に643万キロリットルまで落ち込んだ後、現在は回復基調にあるが、23年度の実績でも1187万キロリットルにとどまっている。
 石油元売り大手の関係者は「航空会社から供給を増やすよう要請を受けている」とした上で、生産設備能力の限界もあり「すぐには増やせない」と打ち明ける。流通段階の人手が足りないという要因も指摘され、複合的な構造問題の様相を呈している。
 旅客機用燃料 原油から精製される旅客機向けの燃料。石油元売り各社が製油所で生産する。原油からは沸点の違いなどを利用して、ガソリン、ナフサ、重油など各種の石油製品が精製される。経済産業省によると、2023年度の国内の燃料油生産量は1億3936万キロリットル。ガソリンが4429万キロリットルで約3割を占め、旅客機を含む航空機用の燃料は1割弱の1187万キロリットルだった。