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「運送業者いじめ」頻発 早期の下請法改正要望も  


「運送業者いじめ」頻発 早期の下請法改正要望も   物流業界の取引の構図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 物流の滞留が懸念される「2024年問題」が現実味を帯びる中、公正取引委員会は11日、運送業者への「いじめ」が指摘される荷主企業への立ち入り検査に踏み切った。事前に取り決めた代金を一方的に減額するなどの違反行為は長期に及んでいた可能性がある。「値上げ交渉を試みたが、取り合ってもらえない」。運送業界でこうした例は枚挙にいとまがなく、意識改革や早期の下請法改正を望む声が上がる。

規制緩和

 「30年間以上培われた感覚が抜けていない」。神奈川県にある運送会社の男性社長は物流業界の現状をこう表現する。仕事を発注する荷主の立場は依然強く「代金を上げてくれと交渉しようものなら『代わりの会社は、いくらでもあるぞ』と言われる」と明かす。
 一方で人材不足は深刻化。運転手を確保するため、1月から基本給を引き上げたという。社長は「そうでもしないと人材が集まらない」と語る。
 運送業者は、トラック運送業が免許制から許可制に切り替わった1990年の規制緩和をきっかけに急増した。荷主の立場が強くなった要因の一つといわれている。
 埼玉県川口市の運送会社は22年、楽天グループから不当な扱いを受けたとして損害賠償請求訴訟を提起。現在も係争中だ。担当者は「うちは勇気を出して声を上げたが、できない会社がほとんどではないか」と話した。

ピラミッド

 公取委は、荷主と運送業者間の取引が適正かどうかを継続的に調査している。「優越的地位の乱用に当たり得る具体的な事案がある場合は厳正に対処する」と、荷主への警告も続けてきた。
 公取委が危機感を強める背景には、荷主を頂点にピラミッドのように運送業者が連なる、物流業界ならではの多重下請け構造がある。実際の配送は元請けから再委託を受けた中小の運送業者が担うケースが多いが、中小がコスト増に伴う価格転嫁や待遇の改善を荷主に直接求めるのは難しい。
 23年度の公取委の調査では(1)コスト増分の代金引き上げを求めると「自助努力で解決すべきだ」と拒否(2)運送内容の変更に伴う負担増分の不払い(3)「協力値引き」と称した一方的な減額―といった荷主の対応が確認されたという。
 荷主と運送業者は法律上、下請けの関係になく、公取委は独禁法の「物流特殊指定」に基づき調査などをしている。
 「優越的地位にあるかどうかを1社ずつ調査し、認定する現在の手続きは時間がかかる」(関係者)ため、公取委は下請法を適用できるよう法改正を検討している。