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株主提案、過去最多91社 上場企業6月総会 投資家、改善策要求


株主提案、過去最多91社 上場企業6月総会 投資家、改善策要求 6月開催の株主総会で株主提案を受けた企業数
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今年6月に年1回の定時株主総会を開く上場企業のうち、過去最多の91社が株主提案を受けたことが15日、三井住友信託銀行の7日時点の集計で分かった。議案数は最多に並ぶ合計343で、株式を大量保有する投資ファンドなどの機関投資家が、企業価値を向上させる改善策を要求するケースが目立つ。厳しい議案を突き付けられた経営陣と株主との攻防の舞台になる総会もありそうだ。
 株主総会の招集通知に記載された議案が会社提案、株主提案のどちらなのかを調べるなどして集計した。株主提案を受けた上場企業数は、昨年6月の定時株主総会での89社がこれまでの最多だった。議案数の合計は昨年6月も343だった。
 株主提案が増えた背景には、上場企業に対する東京証券取引所の強い働きかけがある。東証は、1株当たりの純資産に対し株価が何倍かを表す「株価純資産倍率(PBR)」が1倍未満など、市場の評価が低い企業を問題視。昨年3月末以降、事業戦略見直しなどの対応策を公表するよう企業に求めているためだ。
 投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京)は、鉄鋼メーカーの淀川製鋼所(大阪市)などに、PBR1倍以上を目指す経営計画の策定と公開を定款に定めるよう要求。別の機関投資家は取締役と株主の個別面談を複数企業に提案した。
 PBRが1倍以上であっても、株主は一段の企業価値向上を経営陣に迫っている。東京ディズニーランドなどの運営会社オリエンタルランド株の約2割を持つ京成電鉄(千葉県市川市)に対し、英投資ファンドのパリサー・キャピタルは、持ち株比率を引き下げ、株式売却で得た資金を成長投資に回すよう提案した。
 東証の直近の集計によると、3月期決算企業の定時株主総会は6月27日にピークを迎え、29・5%に当たる668社が開催予定。ピーク日の集中率は1995年に96・2%だったが、その後は多くの株主が参加できるように分散傾向となった。2021年以降は30%未満の水準が続いている。
 株主提案 経営側による会社提案とは別に、株主が取締役の選任や解任、定款変更などの議案を株主総会に諮ること。提案できるのは議決権全体の1%以上を6カ月前から継続保有する株主などに限られると、会社法が規定している。複数の株主が共同で議案を提出することもできる。国内外の投資ファンドなどが経営改革や株主還元を働きかけるケースが目立つ。