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カスハラ抑止へ連携 全日空と日航が対処方針 迷惑行為に「毅然と」


カスハラ抑止へ連携 全日空と日航が対処方針 迷惑行為に「毅然と」 全日本空輸と日本航空のカスタマーハラスメント対処方針
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 全日本空輸と日本航空は28日、社会問題化しているカスタマーハラスメント(カスハラ)の対処方針を共同で策定したと発表した。2社ではカスハラを受けた社員の休職や離職が相次いでいる。競合する2社がカスハラの抑止に向けて連携し、暴言や過剰な要求といった迷惑行為に厳しく対応する姿勢を示した。2社は業界団体を通じ、他の航空会社にも対処方針の策定を促す。
 厚生労働省は28日、カスハラによって精神障害を発症し、2023年度に労災認定を受けたケースが52件あったと発表した。カスハラによる労災件数の集計は初めてで、被害の深刻さが浮き彫りになった。顧客との接点が多い全日空と日航が対処方針をまとめたことで、同様の動きが産業界に広がる可能性がある。
 対処方針では、カスハラ行為を「暴言」や「脅威を感じさせる言動」、「過剰な要求」、「業務スペースへの立ち入り」「セクハラ」など九つに分類。「能力を否定する侮辱的な発言」は暴言に当たるといった具体的な行為も例示し、従業員がカスハラ被害を受けたかどうかを判断しやすくした。
 カスハラは「従業員の人権や就業環境を害するものとして、毅然(きぜん)と行動し、組織的に対応する」と明記。暴行や盗撮など犯罪に当たると判断した行為は警察に通報する方針も示した。
 2社は東京都内で記者会見し、電話対応したオペレーターが顧客から「ばか、無能だな、おまえ」とののしられたり、空港で社員が「自宅まで謝罪に来い」と顧客に詰め寄られたりしたカスハラの実例も公表した。
 日航の担当者は「これまではカスハラの定義が明確でなく、対応に苦慮していた」と説明。全日空の担当者も「意見や要望は従業員の成長につながるが、暴言は何も生み出さない」と強調した。
 コロナ禍の収束で航空需要が急回復し、顧客との接点が増え、カスハラによる従業員の休職、離職は航空業界共通の課題になっている。