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10年国債 1.1%に上げ 12年ぶり 国の財政圧迫も


10年国債 1.1%に上げ 12年ぶり 国の財政圧迫も 10年物国債の表面利率と利回りのイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 財務省は2日、7月3日に発行する10年物国債の入札で、国債の買い手に支払う利子の割合を示す「表面利率」を6月までの年0・8%から1・1%に引き上げた。1%台に乗ったのは、日銀が大規模な金融緩和策を始める前の2012年4月以来約12年ぶり。日銀の政策修正で市場金利が上昇していることを反映した。国の利払い費負担が一層高まり、財政を圧迫することになる。
 国債は国が政策資金を調達するための借金で、10年債は買い手に元本を返済するまでの期間が10年のもの。10年債の市場利回りは長期金利の代表的な指標となる。金利上昇局面を迎え、銀行が固定型の住宅ローン金利を引き上げるなど影響が出ており、国の借金にも波及した。表面利率が1・1%となったのは11年12月以来。財務省は25年度の長期金利が想定より1%上振れた場合、国債の利払い費が8千億円増えると試算している。
 国債は買い手となる金融機関を毎月の入札で決める。新たな国債の表面利率が市場金利より低いと魅力が乏しく、落札額が額面を下回る可能性も。財務省は安定的に資金を調達するため、実勢に合わせて3カ月に1度、利率を見直している。
 日銀は13年4月に大規模な金融緩和策を始めた。国債を大量に買い入れて世の中に出回る資金を増やし、長期金利を低く抑えてきた。国債の表面利率も連動して引き下げられた。
 国は低金利下で借金を重ねてきたが、日銀は今年3月に長期金利の誘導目標や上限を撤廃した。

<用語> 国債の表面利率 国の借金である国債の買い手に対し、国が1年間に支払う利子の割合。額面が100万円で利率が1・0%の場合、買い手は国から年間1万円受け取れる。財務省が入札時の市場実勢を参考にして決定し、償還まで利率は変わらない。国債自体は市場で売買され価格が上下する。市場での購入価格に対する利子も含めた利益の割合は「利回り」と呼ばれ、価格によって変動する。