有料

個人マネー流入背景に 新NISAや物価高で機運


個人マネー流入背景に 新NISAや物価高で機運 東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価を示すモニター。ともに終値としての史上最高値となった=4日午後、東京都中央区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価が共に史上最高値を更新した背景の一つには、1月からの新しい少額投資非課税制度(NISA)による個人投資家の資金流入がある。物価上昇が続く中、目減りする預貯金から資金を移そうと運用の機運も高まる中、金融業界は個人マネーの呼び込みに知恵を絞る。

相談増加
 「新NISAを利用したいが、何から始めたらいいか分からない」。みずほ証券と楽天証券が出資して4月に開業した金融商品仲介業のMiRaIウェルス・パートナーズには、投資経験の少ない人からの相談が増えているという。
 みずほ証券出身の専門家が対面とオンラインで相談に応じる。新会社は顧客の需要に合わない商品や、理解できない複雑な商品は提案しないなど「やらない5カ条」を掲げる。進藤正毅社長は「中立的な立場で信頼を得るのが最優先」と話し、旧来型の証券ビジネスとの違いを強調する。
 NISAは、株式や投資信託の売却益や配当を非課税にする制度。1月から保有できる限度額を最大800万円から1800万円へと大幅に引き上げたほか、非課税期間を無期限に延ばした。
 この機会に個人投資家の裾野を広げようと、業界横断の新たな取り組みも始まっている。

金融教育
 政府が主体となり、日銀、全国銀行協会、日本証券業協会も出資して設立された金融経済教育推進機構は8月から本格始動する。機構は千人程度を目標に「認定アドバイザー」を各地に派遣し、年間75万人に金融経済教育を提供することを目指す。
 アドバイザーは特定の金融機関に所属せず、中立性を保った上で個人の相談にも乗る。相談料金には国の補助があり、当面は1時間2千円程度になるという。
 日本証券業協会は「特定の金融商品を勧められない安心感から相談しやすい」(幹部)とみる。
 日銀によると、今年3月末時点の家計の金融資産は過去最大の2199兆円。まだ半分以上を現金・預金が占め、その比率は米国やユーロ圏と比べて著しく高い。
 日経平均だけでなく、TOPIXでもついに「バブル超え」を果たした株高は「貯蓄から投資へ」を加速させるのか。金融業界も政府も固唾(かたず)をのんで見守っている。