6月に大同火災海上保険の新社長に松川貢大氏(56)が就任した。県内損保業界を取り巻く経営環境や課題、台風被害に左右されない経営など、松川社長に方針を聞いた。
―就任の抱負は。
「創業は復帰前の1950年。本土復帰という歴史の分岐点に関わった唯一の損害保険会社で多くの先人が関わってこられた。この事業をしっかりと継承することが第一。地域に根差し、沖縄のために事業を継続させていきたい」
―県内損保業界を取り巻く経営環境について。
「自然災害の脅威が甚大化、大規模化している。『台風に左右されない経営基盤』が一番大きなテーマだ。昨年の台風6号では過去最大級の事故受付件数と保険金支払いだった。主力の保険引き受けは自動車、火災となっているが、それ以外の新種保険に掘り起こしの余地がある。収益の柱を1本、2本と増やし、経営基盤の安定化を図っていきたい」
―新たな収益の柱は。
「コロナ禍が終わり、経済活動が活発化している中、インバウンド(訪日客)が増えている。7月1日から新たなインバウンド保険の取り扱いを始めた。これまで外国人のお客さまが沖縄でけがや病気をした際、治療費を支払わずに帰国してしまう事例もあった。弊社のインバウンド保険は提携している病院で観光客が診察を受けた場合、キャッシュレスで治療を受けることができる。観光客も安心して来県できるほか、地元の医療機関もスムーズな事務対応が可能となった」
「スタートアップ企業への支援もわれわれの持つスキームを活用してできないか模索している。インバウンドが増え、事業者も多様化していく中、新たなリスクも生じてくる。サイバー分野も2023年度から取り組んでいる。自然災害に影響されにくい、自動車、火災以外の分野を注力、開拓していきたい」
―組織改革について
「昨年の台風6号は8月の襲来だったが、半年以内で9割の保険金支払いを終えることができた。より迅速な支払いを可能にするために保険金を支払う部門を組織再編した。自動車部門とそれ以外に分け、よりスムーズに対応できるようにした」
―中期経営計画の最終年度を迎える。
「三つの柱があるが、重要なのは人と組織の醸成だ。組織の成長には人材戦略が欠かせない。上からトップダウンの人材育成ではなく、従業員一人一人に寄り添い、自主的な姿勢を尊重したい。人の成長は組織の成長に相乗的につながる」
(聞き手・当間詩朗)