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自己負担増、受診控え懸念


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 新型コロナウイルス感染症の流行が「第11波」に入ったとの見方が強まった。厚生労働省が19日に発表した入院者数は3081人で前週比1・31倍。半数以上の2278人が70代以上の高齢者だ。抗ウイルス薬代など医療費の公費支援や無料のワクチン接種が3月で終了し、受ける医療によっては自己負担が高額になるため、受診控えを懸念する声も上がる。

コロナ前に回帰

 「当院でも入院患者が増えてきている」。大阪府済生会中津病院の安井良則・院長補佐兼感染管理室長は明かす。最後にワクチン接種を受けてから時間がたった人が多いためか、今回の流行ではこれまでには見られなかった、接種済みの高齢者での肺炎が増えている印象があるという。
 昨年5月に新型コロナが感染症法上の5類に移行してから2度目の夏。日本感染症学会の長谷川直樹理事長は「世間がコロナ流行前に戻り、3密(密閉、密集、密接)回避や手洗いなどをだんだんやらなくなってきた。今回は去年の夏をしのぐぐらいの流行になる可能性がある」と指摘する。

処方しづらく

 当初、全額公費負担だった医療費支援は段階的に縮小され、今年3月には全て終了した。抗ウイルス薬は発症からできるだけ早く使った方が効果が期待できると考えられているが「処方されるとすごいお金になるので病院に行かない人もいる」と長谷川さんは語る。医療現場からは「処方しづらくなった」との意見も出ている。
 医療機関で処方される新型コロナの飲み薬には、米メルクのラゲブリオ、米ファイザーのパキロビッド、塩野義製薬のゾコーバがあるが、5日分の自己負担額は、3割負担の人でそれぞれ約2万6千円、約3万円、約1万5千円となる。入院の場合に、「高額療養費制度」を適用後に行われていた最大1万円の特別な補助も4月以降、なくなった。

心がけ

 2021年2月以降「特例臨時接種」として全額公費負担だったワクチンは、65歳以上の高齢者と基礎疾患のある60~64歳を対象にした定期接種となり、今年10月1日から始まる。自己負担は最大7千円となる見通しだ。接種期間外や対象外の人が打つ場合は任意接種で、1万5千円程度が原則全額自己負担となる。
 沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師は「移動や接触を自粛するのではなく、小さな心がけを積み重ねて感染拡大を穏やかにし、高齢者らリスクの高い人を守っていくべきだ」と訴える。