有料

台湾、原発1基停止へ 半導体・AI活況 電力需要は増


台湾、原発1基停止へ 半導体・AI活況 電力需要は増 台湾電力第3原発=1月、台湾南部・屛東県
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【台北共同】半導体や人工知能(AI)を産業の柱に据え電力需要の増加が見込まれる台湾で、近く実施される予定の原発停止が議論を呼んでいる。民主進歩党(民進党)政権は2025年までの脱原発と50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、稼働中の原発2基のうち1基を運転免許の期限を迎える27日に停止する方向だ。
 頼清徳総統は、世界をリードする半導体産業を基礎に台湾を「AIの島」にすると表明。訪台した米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が6月、台湾に新たなスーパーコンピューターを設置する計画を明らかにするなどAIブームに沸く。
 ただ半導体製造やAI産業は大量の電力を消費する。台湾経済部(経産省)が15日発表した報告書によると、AI関連の電力需要は23年から28年にかけ約9倍に増加すると予測。台湾経済は順調に成長しており、全体の電力需要も24~33年まで年平均2・8%増のペースで増えると見込んだ。
 経済界からは脱原発を遅らせるよう求める声も上がる。電子機器受託製造サービス(EMS)大手、和碩聯合科技(ペガトロン)の童子賢会長は、原発は長年電力の安定供給に寄与してきたとして27日の運転停止について「残念だ」と表明した。
 民進党政権は使用済み核燃料の処理や安全の問題が残っているとして、脱原発の方針を強調。政権は増加する電力需要を再生可能エネルギーで補う計画を掲げており、報告書は総発電量に占める再エネの比率は23年の9・5%から26年に20%に達すると推定。だが「再エネを短期的に発展させるのは容易ではなくコストも高い」(台湾紙、経済日報)との見方も出ている。
 27日に運転を停止するのは第3原発(南部・屛東県)の1号機。その後は同原発2号機だけが運転を続けるが、25年に運転免許が期限を迎える。立法院(国会)では原発の活用を訴える最大野党、国民党が運転延長を目指して提出した改正法案が審議中で、原発を巡る議論は続きそうだ。