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「脱法行為の推奨」批判 「残業を業務委託に」が優勝 内閣府 政策コンテスト


「脱法行為の推奨」批判 「残業を業務委託に」が優勝 内閣府 政策コンテスト 内閣府がホームページに掲載していた、賃上げに関する政策案コンテストで優勝したアイデア
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 内閣府が実施した「賃上げ」に関する政策案コンテストに対し、労働組合や労働法の専門家から「脱法行為の推奨だ」などとの批判が相次いでいる。
 時間外労働(残業)に関して、業務委託契約に切り替えることで社会保険料などの負担を減らすというアイデアが「優勝」に選ばれたためで、政権の姿勢が問われるとの指摘も出ている。
 内閣府は6月、府内の職員を対象に実施した「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」の結果をホームページなどで公表。優勝に選ばれたアイデアは、会社員の残業を禁止して、定時以降の業務は個人事業主として業務委託するという案で、社会保険料の負担が減って手取りが増えるなど労使双方にメリットがあるとする内容だった。
 これに対し労働法の専門家らは、社会保険料の支払い逃れにつながる懸念や、実質的に会社の指揮下にありながら個人事業主扱いとなることで労働時間が管理されなくなる恐れがあるなどと指摘。連合は「国の重要政策の企画立案をつかさどる内閣府が法の潜脱行為を助長するような提案を表彰し公表したことは遺憾」とする事務局長の談話を公表した。
 一方、新藤義孝経済再生担当相は7月19日の記者会見で「実際の政策立案にということは全く考えてない」「独創性を持って応募してきたかが評価の観点」などと説明し、問題はないとの認識を示した。内閣府はコンテストに関するホームページの内容を修正、「一定の周知期間が経過した」として政策案の内容の掲載を終えている。
 内閣府のこの対応には「隠蔽(いんぺい)ではないか」と批判も出ている。立憲民主党は近く内閣府へのヒアリングを実施し、追及する構えを見せている。
 日本労働弁護団幹事長の佐々木亮弁護士は「労働法を無視し、ごまかしの賃上げを提唱する政策案が、なぜ表彰されたのかが本質的な問題。選考過程を明らかにし、表彰の撤回などの対応がとられなければ、賃上げ政策に対する岸田政権の姿勢が問われる」と話した。