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追加利上げ「慎重判断」 日銀副総裁言及、市場に影響


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 日銀の内田真一副総裁は7日、北海道函館市で記者会見し、金融市場が不安定だとして今後の追加利上げの判断は「これまでより慎重に考えるべき要素が生じている」と述べ、当面利上げしない考えを示した。大幅な株安など市場の急変動が「(経済の)下振れリスクであるのは明白だ」と語った。会見に先立つ午前の講演でも追加利上げに慎重なトーンで発言し、市場では一時1ドル=147円台まで円安が進み、朝方下落した株価が一転して急上昇する波乱材料となった。
 日銀は7月31日の金融政策決定会合で、円安による物価の上振れリスクも考慮して政策金利を0・25%程度に引き上げることを決めた。その後、米国の景気減速懸念が重なって、日経平均株価が史上最大の下落と上昇を連日で記録するなど市場の動揺が続いている。
 内田氏は講演で、2%の物価安定目標の実現に近づけば、追加で政策金利を引き上げていく日銀の基本姿勢に改めて言及しつつ「金融資本市場が不安定な状況で利上げすることはない」と述べた。「当面、金融緩和をしっかりと続ける必要がある」とも強調し、市場が激しく動いている間は追加利上げを行わない考えを示した。
 午後の会見では、金融市場が落ち着く時期は不透明だとして「緊張感を持って見ていかないといけない」と発言。最近の日経平均株価の急落は、日銀が7月に決めた追加利上げで円高が進んだことが要因の一つだとも説明した。その上で、追加利上げは円安修正を通じて「物価の上振れリスクを減らした」と指摘。急激なインフレを抑えるため立て続けに利上げに動いた米欧とは状況が異なり、日本の場合は物価が急上昇するリスクは低いとし、利上げの時期を「選べる」と語った。
 日銀の植田和男総裁は、年内のさらなる利上げの可能性も排除しない考えを示している。