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賃上げ、転嫁 裾野拡大が鍵


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 共同通信社が実施した主要企業アンケートは、今後も景気の拡大基調が続くとの見方の一方で、慎重姿勢もにじむ内容となった。円安や物価高による消費低迷を懸念する声も目立つ。大企業では賃上げの恩恵が広がっているが、中小企業では原材料費や人件費の高騰を取引価格に転嫁できずに苦境に陥っているケースもある。賃上げや価格転嫁の裾野拡大が今後の景気の鍵を握る。
 2024年春闘の賃上げ率は連合の集計で大企業は5%を超えたが、中小は届かなかった。物価高による打撃は深刻で、東京商工リサーチによると24年上半期の倒産件数は10年ぶりの高水準に増加した。うち9割近くを従業員10人未満の企業が占め、大企業との明暗が浮き彫りとなっている。
 政府は発注側の大企業が下請けに不利な取引を強いる構造を問題視しており、公正取引委員会が下請法違反で再発防止を勧告する事例が今年に入って相次いでいる。こうした厳しい情勢も背景に、アンケートでは「経済成長の恩恵が一様には行き渡りにくくなる中、大企業への風当たりは強まっていると感じるか」との問いに、感じると答えた企業が21%に上った。
 中小企業がコストの増加を大企業に転嫁できれば収益が改善し、賃上げの動きも力強さを増すことが期待される。経済全体を底上げする成長に向け、大企業の積極的な対応が求められている。