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温暖化でコメ収穫量低下 品質劣化、21世紀末予測


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、温暖化が進んだ21世紀末の環境を人工的につくり出す装置で稲を栽培する実験を実施した。積極的な気候変動対策をしないとコメの収穫量が低下し、コメ粒が白く濁る「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」が大幅に増えるなど、品質が劣化することを突き止めた。収穫量は35%減る可能性が示された。
 実験では、農研機構が開発した「ロボティクス人工気象室」を用いた。気温や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度などを細かく制御できる。気候予測に基づき2100年の環境を設定し、茨城県つくば市の1990~99年の平均値を基準に稲の生育を比較した。
 現状と同様に化石燃料を使い続け、積極的な気候変動対策を取らない場合は気温が4・5度上がり、CO2濃度も上昇。ある程度の対策をした場合は気温が1・4度上昇すると想定した。人工気象室で「あきたこまち」や「ひとめぼれ」など5品種を栽培した。
 実験の結果、気温とCO2濃度が上がるほど、5品種とも植えてから穂が出るまでの期間が早まることが分かった。8月に人工気象室で栽培中の稲も、21世紀末の環境では30センチほど基準よりも背が高く育っていた。
 一方で1株当たりの穂の重さは平均で35%軽くなり、収量は減少した。コシヒカリでは基準年に0~5%だった白未熟粒の割合が、30~70%程度まで大きく上昇した。昨年の猛暑でも白未熟粒は発生し、精米したときの量が減少し流通量に影響している。
 研究をまとめた農研機構の米丸淳一氏は、実験について「最も未来に近い環境で何が起こるかが分かる。未来の環境に合う、おいしい作物を作る研究に役立つ」と話す。今後は大豆、麦などの作物や、宇宙環境での栽培法の研究にも貢献する可能性があるという。