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防衛装備品 実用化ゼロ 研究・開発事業 活用検討不足か


防衛装備品 実用化ゼロ 研究・開発事業 活用検討不足か 防衛装備品の研究から実用化までのイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 防衛装備庁が先端技術を活用して装備品など防衛分野の研究・開発につなげる二つの事業について、これまでに事業を踏まえて実用化された装備品がないことが13日、財務省の予算執行調査で分かった。事業を決定する際に活用方法の検討が不足していたり、装備品を使う自衛隊のニーズを十分に把握できていなかったりする可能性がある。
 2事業の2015~23年度の予算総額は計900億円超になっており、財務省は「目に見える効果を出していく必要がある」としている。
 政府は装備品開発を含む防衛費に23~27年度の5年間で総額43兆円程度の予算を投じる方針。財源の一つには増税を検討しており、丁寧な説明が必要になりそうだ。
 2事業は、基礎研究や民間の先端技術を活用して、装備品の創出につなげる「橋渡し研究」と、その前段階として民生にも活用できる防衛分野の先進的な基礎研究を育成する「ファンディング制度」。
 橋渡し研究は、装備品開発を加速させるために20年度から始まった。研究が進めば試作などを検討している。関係者によると、実用化しても使わない可能性があると判断され、中止、中断した研究があったという。ファンディング制度は15年度に創設され、23年度までに165件が採択された。
 同庁は2事業について「より効果的な制度として利用できるように(財務省の)指摘を生かしていく」としており、政府が掲げる防衛力強化に向けて25年度も2事業の概算要求を視野に入れる。一方、財務省は自衛隊の需要を把握するなど効率的な開発を促す考えだ。

 防衛装備品 自衛隊が使う器具などのことで、航空機や艦艇、車両、火器の他、殺傷能力のないヘルメットや防弾チョッキ、食糧なども含む。装備品の顧客は従来、自衛隊に限られていたが、2014年に閣議決定された「防衛装備移転三原則」に基づき条件付きで輸出を可能にした。