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認知度不足で一部混乱 初動対応に課題  


認知度不足で一部混乱 初動対応に課題   南海トラフ地震被害想定地域の臨時情報の認知度
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2019年に運用が始まった南海トラフ地震臨時情報の初発表で、企業は初動対応に課題を残した。電力や通信といったインフラ企業は非常時態勢を敷いた一方、認知度不足を背景に一部の企業は用意がなく、混乱した例もあった。

要した時間

 気象庁が8月8日午後7時15分に巨大地震注意の臨時情報を出すと、ある小売企業は被害想定地域の店舗の営業を翌日以降続けるかどうかの社内議論を慌てて始めた。臨時情報の対応を計画していなかった。
 買い物客や従業員の避難経路などを確認した上で通常営業の継続を決めたが、関係者は「判断に時間を要した」と明かす。
 「社内にマニュアルがなく、何をすればいいのかが分からない」と話す建設会社の広報担当者もいた。
 内閣府が23年7~10月に実施した調査によると、被害が想定される地域の住民でも35・8%が臨時情報を「知らない」と回答。「聞いたことはあるものの、詳しく知らない」が35・5%、「知っている」は28・7%だった。企業側の認知度も同様の傾向だった可能性がある。

急場しのぎ

 主要54社への取材によると、臨時情報(巨大地震注意)の対応は従業員への注意喚起や非常用設備の点検といった急場しのぎが目立った。災害時の事業継続計画(BCP)の整備が遅れている中小企業は戸惑うケースが多かったとみられる。
 より危険度が高い「巨大地震警戒」が発表された場合にも備えが必要だ。住民の避難が大規模になるなど社会的な不安の拡大が予想され、判断の遅れやミスは大きな混乱を招きかねない。
 今回の対応は、立地や業態に応じたきめ細やかな対策だったかどうか。万一の際は従業員や顧客の安全を確保しつつ、店舗の営業やサプライチェーン(供給網)維持に支障がなかったのか。早急な検証が欠かせない。