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「和」のゲノム残そう 日本にまつわる動植物解析 研究者有志 農作物品種改良 活用も


「和」のゲノム残そう 日本にまつわる動植物解析 研究者有志 農作物品種改良 活用も ソメイヨシノ=3月、大阪市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 マツタケ、サンマ、ソメイヨシノ―。日本の文化や食生活に深く関わってきた動植物のゲノム(全遺伝情報)を解析してデータ化し、公開する取り組み「和色(わしょく)バイオゲノムコンソーシアム」を研究者有志が進めている。他の種との違いや生態を明らかにする研究での活用を目指すとともに、数が減って絶滅が危ぶまれる事態にも備える。メンバーは「日本特有の生き物は、日本で手を打たないといけない」と意気込む。
 ゲノムは生命の設計図とも呼ばれ、DNA配列で記録された遺伝情報の全てを指す。ゲノムを調べれば、生物の特徴や進化を探る手がかりが得られる。技術の進歩で解析にかかる時間やコストは大幅に低下した。ただゲノムが解析されていない生物は多く、絶滅すると分析が難しい。
 和色コンソーシアムは昨年から始まり、国立遺伝学研究所(静岡)やかずさDNA研究所(千葉)の研究者らが参加する。研究者は、それぞれの研究テーマに沿って動植物のゲノムを解析。そのうち、日本人の食生活や文化と関係が深いと考えられるデータを集め、ホームページで公開している。
 世界的には真核生物約190万種のゲノムを調べる国際プロジェクトが進行している。ただ日本の動植物の解析が十分に進んでいるとは言いがたい。和色コンソーシアム発起人の工楽樹洋・遺伝研教授は「日本にしかいない種は、海外の研究者も積極的に調べてはくれない」と話す。
 現在、静岡県の河津川沿いに咲く「河津桜」、山形発祥のサクランボ「佐藤錦」、鹿児島の特産物「桜島大根」など約30種を紹介。工楽さんらが初めて網羅的にゲノムを解析したサンマも含まれる。
 データは基本的には研究者向け。農作物の品種改良や他の種との違いを調べる研究での活用を想定している。当初から関わってきた、かずさDNA研究所特別客員研究員で東京大教授の磯部祥子さんは「研究者同士で解析方法などを議論するきっかけにするのも目的の一つだ」と語る。
 一方で一般の人に向けた情報発信も検討中だ。「日本にどんな生き物がいて、日々何を食べているのか。文化との結びつきが深い情報だ」と磯部さん。「ゲノムデータを蓄積すれば、日本に関わりのある動植物の保全に役立つかもしれない。日本の文化を守ることにもつながったら良い」と力を込めた。