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座って接客 店員負担減に 常識変え、スーパーなど椅子導入


座って接客 店員負担減に 常識変え、スーパーなど椅子導入 勤務中に椅子に座る店員=7月、東京都台東区の「ドン・キホーテ浅草店」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 接客中に座ってもいいですか―。従来立ちっぱなしだった仕事に、椅子を導入する企業が増えている。労働環境を改善し、新たな人材確保や職場への定着につなげる狙いがあり、スーパーや書店、薬局などが相次いで導入した。立ち仕事という日本での社会常識を変革する大きな動きとなるか、注目されている。
 円安効果で外国客がひっきりなしに訪れる東京都台東区のディスカウント店「ドン・キホーテ浅草店」。免税専用レジの行列の先に、小さな椅子に座る従業員たちの姿があった。
 座りながら大量の商品を袋に詰めていく40代女性店員は「これまで勤務中はずっと立ち仕事だった。疲労で足がしびれていたが、今は椅子に座って作業ができるため足腰への負担が減り、助かっている」と話す。
 ウクライナ国籍の店員も「母国では椅子に座って接客するのが当たり前だったので、日本のスーパーやコンビニで立っていることを不思議に思っていた」といい、職場の変化を歓迎する。
 ドン・キホーテでは16店舗で椅子を導入。導入を進めた担当者は「従業員から勤務中の負担が減ったという声が多く届いている。離職が減ったり、応募が増えたりするとありがたい」と話し、期待を寄せる。
 椅子も工夫している。企業の人手不足解消にも取り組む求人情報サイト運営のマイナビが家具メーカー「SANKEI」(三重県鈴鹿市)と共同開発した。パイプ椅子に小さな座面のみを設置した形で、少し腰を下ろすのに適した仕様。顧客の視線を意識し、座っても背筋が伸びているように見える。
 既にダイエーやアオキスーパー(名古屋市)のほか、大垣書店(京都市)、杏林堂薬局(浜松市)、宅配ピザを展開するポケットフーズ(福岡市)など約50社が導入した。マイナビの開発担当者によると、顧客からも好意的な意見がほとんどといい「世の中の価値観を変えるのは難しいが、この取り組みが社会を変える火種になって、多くの人が仕事を楽しめるようになってくれればうれしい」と話した。